マンション立て直しは「絵に描いた餅」

日本とは思えないような物騒な話ですね…。

牧野:とりわけマンションでは、住民の高齢化が進むと、住民たちの多くは住居の改善に大金を費やす意欲はなくなります。人生の残り時間が多くは残っていないからです。高齢化の延長線上で空き家が増えていくと、管理費や修繕積立金の滞納も増えます。

 管理費や修繕費の滞納が、外国人オーナーによるものである場合、海外までその人を追いかけてお金を回収するなどということはできません。物件を差し押さえて売却するなどといったことを一生懸命やる管理組合もありません。もはや区分所有者の5分の4以上の決議でマンションを建て直すなどということは「絵に描いた餅」。そうなると、そこから逃げ出そうとする人はさらに増えていく。資産であった不動産が、一転して負債になってしまうのです。

資産であった不動産が、一転して負債になる瞬間とは

「負債」というのは言い過ぎでは?

牧野:いいえ。価格が一定以上下がってしまい、売ることもできず、貸すこともできず、かといって誰も使わないということになれば「負債」といっても過言ではありません。現時点でも、リゾートマンションでは一戸30万円などといった物件があるのをご存知かと思います。購入すれば管理費や固定資産税、維持費などが発生します。だから買い手がつかない。

 将来、都心や大都市圏の高級マンションもスラム化してしまえば、同様の状況になるでしょう。外国のスラムのように、たとえ窓ガラスが割れていても、誰もそれが異常なことだと思わなくなってしまう。いったんスラム化してしまうと、賃貸先の見つからないオーナーが「誰でもいい」から貸すといったケースも増えるでしょう。

 反社会的勢力の人達が入ってきて事務所を開いたり、犯罪の温床になることもあるかもしれません。場合によっては、そうした人たちが意図的に騒いで、残っている人の追い出しを企てるなどといったことも。そうなると、負のスパイラルです。悲しい現実は、対岸の火事ではなくすぐそこまで迫っています。

「借家で十分」と考える人にとって、家はよりどりみどりに

救いのない話ばかりですね…。

牧野:よい側面もあります。昭和の人間の多くが背負い込んだ、非人間的な「35年ローン」といった呪縛から、若い人たちが自由になるということです。高度成長期の頃のように不動産の価格が上がっていくことがもはや幻想となった以上、若い人たちの多くにとって、住宅の価値とは「利用価値」に過ぎないという認識になっていきます。そうなれば、昭和の人間たちが住宅に費やしていたお金を、別のポジティブなことに振り向けて使うことができるようになる。

 家を借りるにしても買うにしても、居住に必要なコストは下がっていくでしょう。そして、多くの人の心の中から「自分の家を買いたい」という欲求が減れば、住宅の価格はさらに急速に下がります。「家は借家で十分」と考える若い人たちにとって、家はよりどりみどりになります。ウィークデーは通勤に便利な都心の賃貸住宅に住み、週末はやはり賃貸の、広い庭のある郊外の一戸建てでゆっくり過ごす。そんなライフスタイルを選ぶ人たちも増えるのではと思います。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)
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