不動産を消費財と見る、団塊ジュニア

「金妻」の主人公たちも、結果として一代限りの家を持つためにあまりにも多くの労力とお金をつぎ込んでしまったことを、悔いているかもしれませんね。「金妻」放映から約35年が経ち、人々の価値観やライフスタイルはすっかり変わってしまった。

牧野:そういうことです。ターニングポイントは、1996年ごろだっただろうと推察しています。その頃、専業主婦家庭の数を共稼ぎ家庭の数が上回りました。先ほども言いましたが、共働き家庭では、子供を保育所に預けて、郊外から東京都心などへ長時間通勤するのは至難のわざですからね。結局、都心に住むことになるわけです。

 しかし、そうした今の若い人の意識は、彼らの父母のような昭和の人間の意識とはまったく違います。親の世代のように一生をかけて35年ローンを組み、人生を豊かにするためのお金のほとんどを住宅に費やすことのバカバカしさに、とうの昔に気づいています。便利な生活ができれば賃貸で構わないという人が多い。もしも会社をリストラされて収入が減ったら安い借家に移ればいいし、家族構成が変化すれば別の借家を探して住めばいい。若い人の感覚では、住宅も家電や自動車のような耐久消費財と同じような存在なのです。

 私の身近にいる若い人や若いお客さんには、あえてローンを組むのであれば、倉庫みたいな建物を買って改装しシェアハウスとして運用するとか、二階建の戸建て物件の一階を賃貸に回すとか、ビルを買って民泊事業参入も視野に入れるとか、とても現実的で柔軟な発想を持っている人が多いです。同じ借金するのでも返済原資を自分の給料以外に確保している。投資に対するリターンを考えて、自分の家も選ぶ。とても面白い時代になったと思います。

2033年には日本全体の30%が空き家に、スラム化懸念も

「金妻」の舞台となったような、みんなの憧れたニュータウンの今後がどうしても気になってしまうのですが。

牧野:子供たちの声は消え、老人たちしか見当たらなくなっていきますね。間違いなく高齢化が進行していく。そして、空き家の数は右肩上がりに増えていきます。住宅地としての機能を事実上終了せざるを得ない街も出現するかもしれません。だから…もし「投資」という意味も含めて家を買いたいという読者の方は、あと5年くらい待った方がいいと思いますよ。団塊世代の方々が後期高齢者になる頃には、不動産の価格はさらに安くなっていきますから…。

「金曜日の妻たちへ 3」(1985年放送)のオープニングで毎回放映され、ドラマの中にも頻繁に登場した、東急田園都市線沿線のニュータウンの坂道。ドラマ放送当時は坂の両側に桜並木があり、桜の名所だった。しかしその後、古木となった一部の木が倒れて事故が発生したこともあり、数年前すべて伐採された。このためテレビ放映時の面影は薄い。この住宅街でも住民の高齢化が進む。
「金曜日の妻たちへ 3」(1985年放送)のオープニングで毎回放映され、ドラマの中にも頻繁に登場した、東急田園都市線沿線のニュータウンの坂道。ドラマ放送当時は坂の両側に桜並木があり、桜の名所だった。しかしその後、古木となった一部の木が倒れて事故が発生したこともあり、数年前すべて伐採された。このためテレビ放映時の面影は薄い。この住宅街でも住民の高齢化が進む。

牧野:もちろん、空き家が増えるのは郊外のニュータウンだけではありません。今はまだ郊外からの流入により東京の人口は増えています(※編集部注 4月14日に総務省が発表した2016年10月時点の人口推計によると、東京都の人口は前年比0.8%増、1362万人)が、東京の住民の高齢化はこれからが本番。都心や大都市の分譲マンションでも多くが主を失ったり、介護施設などに入所したりして、賃貸に出されるようになります。一方で、おかしなことですが、人口が減っていくというのに相続税対策などもあって賃貸向けの集合住宅の大量供給は今も続いています。

 野村総合研究所は2033年には日本全体の30%が空き家になると試算しています。数にして約2170万戸です。まさに日本全体が「空き家列島」になるわけです。そして、空き家率が30%を超えてしまうと犯罪が増え、地域が荒廃していき、「スラム化」が一気に進むと言われています。

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