前回の東京五輪にはUD的思想があった
人への思いやりが足りないということですか。
清水:個別で見ていくと、思いやりを随所に見つけられるのですが、全体で見ると足らない部分が多い。UDというと、高齢者や身体障碍者への配慮と思いがちです。しかし、そもそも対象を限定することがおかしい。例えば女性に優しいと言い切れるか。これから確実に増えていく訪日客に優しいと言い切れるか。そもそもデザインに限定することもおかしい。すべてのモノ、サービスにUD的思想が込められているべきだし、そうでないと日本の国際競争力は落ちてしまうのではないかとすら思います。
日本人は外国語とコミュニケーションを取るのが難しい。そういう認識があったから、1964年の東京オリンピックでは、一目見れば競技種目が分かるピクトグラムが採用され、以来、オリンピックではそれが当たり前となりました。当時、工業デザイナーがさまざまな案を持ち寄って作りましたが、デザイナーはその著作権を放棄しました。
これって、まさにUDですよね。2020年に東京でオリンピックが開かれます。そこに向けて前回のオリンピックの時のような気概を持って、UDのムーブメントを再び起こしたいですね。私は産業構造審議会の「2020未来開拓部会」のメンバーでもあるのですが、同会では2020年の日本の産業構造のあるべき姿を9つの視点に立って議論しています。そこでもUD的思想を入れ込もうと奮闘しています。
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