1964年の東京オリンピックでピクトグラムが使われ、それが当時の訪日客に好評だったことは広く知られている。「今の日本は、あのころのメンタリティが欠けている。今のままでは『おもてなしの国』という評判が地に落ちるのではないか」。NEC取締役執行役員常務で国際ユニヴァーサルデザイン協議会理事長(IAUD)も務める清水隆明氏は、そう語る。どういう意味なのだろう。
(聞き手は秋場大輔)

NEC取締役執行役員常務兼チーフマーケティングオフィサー(CMO)
1978年4月NEC入社。2006年4月官庁ソリューション事業本部長、2010年4月執行役員に就任。2011年7月執行役員常務、2013年4月執行役員常務兼 CMO(チーフマーケティングオフィサー)。2013年6月取締役 執行役員常務兼CMO(チーフマーケティングオフィサー)、現在に至る。国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)理事長には2015年6月に就いた。
2020年の東京オリンピックを目指して、道路や宿泊施設など、さまざまな社会インフラ整備が進んでいます。しかし、清水さんは重要な視点が欠けているという持論をお持ちですね。
清水:政府は2020年に訪日客数目標を、2015年比倍増の4000万人としましたよね。実現可能性は十分にあると思いますが、外国人が実際に日本にやってきて、幻滅するのではないか、「日本ほどひどい国はない」と思うのではないかと危惧しています。
どうしてでしょう。
清水:私事なんですけれども、2015年6月にIAUDの理事長に就任しました。IAUDはユニバーサルデザイン(UD)の普及を推進する団体として2003年に設立された組織です。UDとは、できる限り多くの人々に利用可能なように最初から意図して、機器、建築、身の回りの生活空間などをデザインすることです。
NECは設立当初からIAUDに参画しているのですが、昨年2月、前任の理事長が体調不良で辞任されたため、弊社に理事長就任の要請がありました。その頃、NECは社内に「デザインセンター」を設立、私が担当役員になりました。IAUDの事情、それからNECの実情が重なり、私がIAUD理事長に就任したのですが、このポストに就いて日本の社会を見渡してみると、「おもてなしの国」と自画自賛している場合ではない気がしてきたのです。
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