「モバイルファーストを実現できたのは白地に絵を描いたため」というお話でした。その時に何か意識したことはありますか?
ジェイ:意識したのはユーザーエクスペリエンスです。われわれが肝に銘じているのは、既存のウェブの悪いところを繰り返さないということです。
「スマホのスクリーンは忙しすぎる」
なぜ世界中に広告ブロッカーがあるのか、なぜ人々がモバイルで記事を読むときに不満を感じるのか。それはスマホのスクリーンが忙しすぎるためだと考えています。正直、スクリーンには情報が多すぎる。クリックして読めるものが多すぎるんです。広告という観点で言えばポップアップとかね。読もうと思っても、ポップアップを消すための×ボタンを探さないといけない。それはユーザーエクスペリエンスとしては最低です。
そこで、私たちは最初から読者を尊重するという全く別のやり方を考えました。デザインについても、広告の出し方についても、ユーザーエクスペリエンスを初めに考えたんです。
記事に関して、ユーザーエクスペリエンスを意識した工夫はありますか?
500~800ワードの記事はデスゾーン
ジェイ:記事作成に関しては伝統的なメディアとそう違いはないと思いますが…、「クオーツカーブ」という言葉は聞いたことがあるでしょうか? これは記事の長さと読者数の関係を示したカーブで、横軸が記事の長さ、縦軸がどのくらいの人が読んだかという読者数です。いつも当てはまるわけではありませんが。これまでのところ、モバイル向けで死ぬ記事は500ワードから800ワードの範囲の原稿だということが分かっています(ワード数は英単語の数。日本語の文字数は、英語のワード数の2~3倍のイメージ)。

つまり読者に読まれるのはそれよりも短い記事か、もっと長い記事だということです。ジャーナリストには、文字を無駄に書くなといっています。それならば、インフォグラフィックスや写真、チャートだけにしてパラグラフを減らすか、あるいはもう2、3週間費やして決定的な記事を書くかのどちらかでしょう。読者はスマホで読み、スマホでシェアしますが、ニューヨーカー誌のような長い記事も読むんですよ。(親会社の)アトランティックでも、読まれるのは8000ワードぐらいの長尺ものです。
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