読者層についてもうすこし具体的にご説明いただけますか。

ジェイ:フォーカスしているのはグローバルに活躍するビジネスパーソンであり、グローバルなビジネスの意思決定にかかわる人々です。CEOやCOOなどの経営幹部をC-suiteと表現しますが、まさにそういった経営幹部が主な読者層です。ただ、経営幹部を読者層に抱えているという面では米ウォールストリート・ジャーナルや英フィナンシャル・タイムズ(FT)、英エコノミスト、米ブルームバーグなども同じだと思いますが、その中でクオーツが特徴的なのは読者層が若いということです。読者層の平均年齢は40歳前後。読者に現在の経営幹部と、テクノロジーと戦略を理解する次世代のC-suiteも抱えているのが大きな特徴と言えるでしょう。

オフィスは開放的でスタートアップの雰囲気
オフィスは開放的でスタートアップの雰囲気

「我々には守るべきレガシーがなかった」

既存メディアも経営の意思決定にかかわる読者を獲得しようとしのぎを削っています。率直に言って、既存メディアとは何が異なるのでしょう。

ジェイ:違いはいくつかあると思います。まず設立が2012年と新しく、我々には守るべきレガシービジネスがなかったということが挙げられます。クオーツが初めからモバイルに最適化できたのは白地のキャンパスに絵を描いたことが大きいと思います。

 別の要素として、ジャーナリストとエンジニアやデザイナーが一緒に働いていることもあるかもしれません。クオーツで働く前に、いろいろな編集部を見てきましたが、たいていはそれぞれが離れて仕事をしています。デザイナーやエンジニアがジャーナリストの横に座ることはまずありません。一方でクオーツは、見ていただければ分かるように、それぞれがすぐ近くに座っています。クオーツから面白いプロダクトが出てくるのは、ジャーナリストが取ってきた情報をエンジニアやデザイナーと共有し、一緒に考えているためです。

創造性の源泉は記者とデザイナーの協業

 一例として、アップルの2016年の「ベスト10アプリ」に選ばれたクオーツのアプリがあります。このアプリは通常のニュースアプリとは違って、チャット的なインターフェースを採用しています。これはジャーナリストとデザイナーが一緒に議論する中で生まれました。「どうすればより面白い表現ができるか」ってね。実際、ここのニュースルームではクリエイティビティとスピードを両立させるようなオーガニックな会話がそこら中で起きています。

クオーツが2016年2月にiPhone向けにローンチしたアプリ。記事が並んでいるのではなく、スマホのチャットメッセージのようにおすすめ記事が出てくる
クオーツが2016年2月にiPhone向けにローンチしたアプリ。記事が並んでいるのではなく、スマホのチャットメッセージのようにおすすめ記事が出てくる
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メディアの見え方やシステムを何か変えたいと思っても、部署が分かれていると時間がかかります。

ジェイ:まさに。何かを変更したり、微修正したりするときに、後ろを振り向いて「ここを一緒に直そうよ」といえば済むのは大きなアドバンテージだと思います。

 広告モデルも大きく異なります。われわれは4年半ビジネスを展開していますが、いわゆるスタンダードなバナー広告は採用していません。クオーツの広告はすべて影響力の大きいネイティブアドです。もちろん、読者には広告だと一目で分かるようにラベルを貼りますよ。広告という観点で見ても、ほかのメディアとは完全に違います。

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