2012年の立ち上げ以来、ビジネスエグゼクティブを中心に存在感を高めているビジネスメディアがある。米アトランティック傘下のクオーツ(QUARTZ)だ。スマートフォンなどのモバイルに特化した戦略で知られており、月に2000万人を越える読者を集める。アプリのダウンロード数も月60万近くで、今なお新規読者を増やしている。
全社員は200人ほどだが、“モバイル・ファースト”を旗印に誕生しただけにエンジニアが20%近くを占める。広告もネイティブアド(広告と明示されているが、編集記事のようなフォーマットの広告)が中心で、スマホの画面には余計なバナーがない。
「取材して書く」というジャーナリストの基本動作は既存メディアと変わらないが、自分でプログラムのコードを書く記者もおり、中身はモバイル向けに最適化されている。今の時代のメディアの形を体現しているメディアと言えるだろう。クオーツとメディアの未来をどう見ているか、ジェイ・ローフ共同社長兼発行人に話を聞いた。
2012年の立ち上げ以来、モバイルに特化したメディアとして注目を集めています。日本にはクオーツのことを知らない読者もいますので、まずはどういうメディアかというところから教えてください。
ジェイ・ローフ氏(以下、ジェイ):私たちはクオーツを「変化にワクワクするようなビジネスパーソンに向けたグローバル経済の新たなガイド」と説明しています。以前、私はクオーツの読者層を以下のように表現したことがあります。飛行機の前半分(ファーストクラスとビジネスクラス)に乗って、毎日のように世界を飛び回る人々――と。彼らは生まれた国や教育を受けた国とは異なる国で働いているかもしれない。あるいは、普段、働いているシリコンバレーにいるように、東京やムンバイの路地を歩いているかもしれない。私たちはそういったグローバルなマインドを持つビジネスパーソンのために記事を書いています。

主要読者は“C-Suite”と呼ばれる経営幹部
“モバイル・ファースト”のメディアを立ち上げたのも、そういった読者層を意識してのことです。彼らはそれこそ四六時中移動しており、スマートフォンなどモバイルで情報を収集しています。もう紙の新聞やパソコンを必要としていないんですね。また、2012年にサービスを始めた時には、既にあらゆるトレンドがモバイル消費にシフトしていました。モバイル・ファーストのメディアを作る必要があるということは明らかでした。はじめの質問に戻ると、クオーツとは「グローバルに活躍するビジネスパーソンがグローバル経済を理解することを支援するデジタルネイティブな報道機関」と定義づけることができると思います。
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