銀行が、データをどのようにビジネスに生かすのですか。

藤原:データについては「どう集めるか」「どう加工するか」「どう使うか」の3つのステップがあります。銀行業界としては、まずは(QRコード決済の統一規格をつくるなど)集める仕組みをしっかり作ります。そのうえでセキュリティは担保しつつ、そのデータをどう使っていくか考えることになります。

銀行がデータを駆使すると、利用者にはどんな利点があるのでしょう。

藤原:たとえば最近のシニア世代なら、年金をはじめとする社会保障をしっかり受けられるかという不安があることでしょう。人生100年といわれるなかでは、自分の寿命と資産の寿命を一緒に考えなきゃいけない時代です。退職してからも30~35年という期間をどのようなマネープランで過ごしていくのか。

 銀行として、いろんなデータをもとに世の中がどう変わるのか解析し、裏付けを取り、これを(資産運用などの)アドバイザリーに使うのです。データがあれば、お客は自分が持っている課題に対してよりタイムリーで的確な答えを導き出してもらえることになる。これは大きな付加価値になります。

 私は「金融を考えるまえに、まずビジネスを考えろ」と言っています。これは個人客、法人客に関わらず非常に重要なポイントになっていく。この点はね、本当にこれだけで1時間は語りたいトピックなんです。

マイナス金利、副作用を注視

銀行に変革を迫る要因としては、低金利政策の長期化も挙げられます。預け入れと貸し出しの金利差で稼ぐ銀行の事業モデルが崩れれば、「余っている人からお金を集め、必要としている人に貸す」という金融仲介機能が果たせなくなるとの懸念もあるのではないでしょうか。

藤原:これまでの効用・作用と、これからの副作用。その両方があると思います。

 一連の金融緩和が日本の景気を押し上げた効用・作用については、ちゃんと評価すべきだと思います。実質GDP(国内総生産)はプラス基調が続いていますし、失業率も低く、完全雇用の状態です。

 上場企業の業績も2年連続で過去最高益。経営者のマインドは非常に前向きになりました。これは金融緩和の大きな効用といえるでしょう。

 一方で、これからは副作用も出てきます。ご指摘のように私たち銀行業界への影響もありますが、私が一番気にしているのは、長引く低金利が企業行動をどう変えるかです。取引先と話していると、やはりみなさん気にされているのは、この低金利が各社の運用にどう影響を及ぼすかなんですね。

 というのもいま、日本企業の6割は実質無借金経営です。ですから企業は(銀行からお金を借りるより)預けたお金をどう運用するかに目線が移りつつある。資産運用の利回りとか、あるいは将来的に給付する退職金を債務として計上するうえでも影響は避けられない。こうした副作用については、モニタリングレベルをあげなければならない。そういう時期に来ていると思います。

「銀行が儲からないから」ではなく、産業界全体のことを念頭に注視していく考え、ということですね。

藤原:はい。「銀行の収益が圧迫されるから」というところをスタートポイントに据えるのではなく、あくまでもマクロ経済全体、日本経済全体、企業行動の観点から銀行業界として発信していきたいと思います。