金融とIT(情報技術)を融合し、利用者にとっての使い勝手を高めた「フィンテック」サービスを提供する新興企業が台頭しています。こうしたなかで、あらためて銀行だからこその強みは何だとお考えですか。

藤原:一言でいうと信用と信頼の基盤です。金融システムとしてのみならず、経済を動かすうえでの社会インフラとして、公共性をもって業務に向き合う。これはやはり銀行の一番大事な部分だと思っています。

 ただ新興企業が金融の世界に入ってくるという新陳代謝は大事なことです。競争相手という側面も部分的にはありますが、全体としては協業相手になりうる。協業の選択肢が増えた、とでもいえるでしょうか。

 かつては金融業界の再編というと、地銀同士が合併するとか持ち株会社を設立してグループを組むケースが多かった。(これからは)金融と非金融の連携、メガバンクと地銀の連携など、いろんな合従連衡の型が出てくると思います。その選択肢のなかにフィンテック企業がいてくれるのは歓迎すべきことです。

 こうした潮流は、我々にビジネスモデルの変革を迫っているだけではなく、銀行トップに経営マインドの変革をも迫っているものと思います。非連続的に物事を考えなくてはなりません。従来の延長線上には将来はないのです。それくらいの覚悟とビジョンをもって向き合うべきだと思っています。

アマゾンは脅威と思わなければいけない

スタートアップだけでなく、ITの巨人たちも金融業界への参入を狙っているとされます。米アマゾン・ドット・コムはその一つ。小売業界では「Death by Amazon」という言葉もありますが、銀行にとっては脅威ですか。

藤原:それは脅威と思わなければいけない。健全なる危機感は持つべきです。ただし「席巻されるからダメ」と後ろ向きになる必要はなくて、社会インフラとしての公共性は持ちつつ、どんな形で我々も打って出ていくか考えたい。

 いかなるイノベーションも、利用者に対してどれだけ利便性が高いものを提供できるかにかかっています。魅力的なものを提供できれば、必ずどこかでブレークスルーが訪れる。いまの立ち位置に安住するつもりは全くありません。

銀行に、どんなことが出来るのでしょうか。

藤原:キーワードは「データを制するものはビジネスを制する」です。過去10年ほどで、お客が銀行に求めるものは変わりました。支店への来客数が3割減る一方で、若い世代はスマートフォンがライフスタイルのデバイスになっている。これから10年先を考えると、おそらくもっと加速度的に変化は進む。

 すると店舗、人材、システム、あるいは(非金融業との)連携の仕方が大きく変わります。金融仲介だけじゃなくて情報仲介の重要さが極めて大きなポイントになってきます。そういう意味で情報仲介のベースとなるデータへのこだわりを、経営の根幹においておかないといけません。