フィンテックを掲げるスタートアップ企業が金融領域に攻勢をかけてくる一方、終わりのみえない低金利政策により「利ざやで稼ぐ」が通用しなくなっている――。これら2つの外的要因にビジネスモデルの抜本的な見直しを迫られているのが銀行業界だ。メガバンクは2017年に人員・業務量の削減を含む構造改革を相次ぎ打ち出し、その結果として就活生の銀行人気にも陰りがみえる。
現況をどう分析しているのか。銀行は将来どのように自らの姿を変えていくのか。大手銀や地銀など全国約200行を束ねる全国銀行協会(東京・千代田)で、4月1日付で会長に就いた藤原弘治氏(みずほ銀行頭取)に聞いた。

1985年早稲田大学商学部卒業、第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。2012年みずほフィナンシャルグループ執行役員、14年みずほ銀行常務取締役。17年みずほ銀頭取。18年4月1日付けで全国銀行協会の会長就任。56歳。(撮影:北山宏一、以下同じ)
就活生にとって、銀行の見方が変わってきています。銀行といえば人気業界ランキングでも首位が定位置でしたが、2019年春入社の学生のあいだでは、その座を他業界に譲ったという民間調査もあるようです。
全国銀行協会・藤原弘治会長(以下、藤原):まず大事なのは、私たちが求める人物像が20~30年前とは変わっているということです。かつて「銀行に入りたい」と言っていた人たちって、いま私たちが一番欲しくない人材なのです。
かつての「銀行に入りたい人たち」というのはどんな人々ですか。
藤原:私もかつて「銀行に入りたい」と思った学生の一人だから、あまり人のことは言えないかもしれませんが……。わかりやすくいえば安定とか持続性とか、そういったものを会社に求める学生さんでしょうか。
そうじゃなくて、新しいものに対する探究心とか好奇心、挑戦のマインドを持っていてほしい。自ら起業するくらいの気概を持っている人です。私たちが学生のみなさんに求めるスペックは、だいぶ変わってきていると思います。
人口減少社会に対する回答
メガバンク各行は2017年、人員や業務量の削減を軸とする構造改革プランを相次ぎ打ち出しました。
藤原:これはある意味、人口減少社会に対する一つの回答であると思っています。銀行業界は従来、人材を大量採用して、定年退職までずっと抱えてきた。ところが日本は生産年齢人口が大きく減るわけでしょう。
我々が(必要以上に)大量採用すれば、本来なら他の産業で活躍していただきたい人までとってしまうことになる。やはり絞れるところは絞り、機械化できるところは機械化しなければなりません。銀行の部分最適ではなくて、日本の全体最適を追求しなければいけないという問題意識があります。
もうひとつ、いったん就職したあとでも銀行とお取引先とあいだで人材がもっと行き来できるようにすることも大事ではないでしょうか。我々は武者修行とも呼んでいますが、人材の流動性をもっと高める工夫も必要になってきます。
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