立憲民主党が「原発ゼロ法案」を出しました。法の施行から5年で原発ゼロにするといいます。

橘川:僕は即時ゼロというのは考えていないんです。ちゃんと時間をかけて、たたむにしろ、続けるにしろ、手を打たなきゃいけない。「極めて近い将来にゼロ」ということ自体が、思考停止なんです。

原発ゼロ派のリアルな戦い方

 「即時ゼロ」と言ってしまえば原発問題が解決するというのが、悲しいかな日本の反原発派。だって、広島と長崎、第五福竜丸を経験した国ですよ。にもかかわらず、ドイツの緑の党のような有力な脱原発政党が育ってこなかったのは、日本の反原発派が建設的な対案を言わないからなんです。

 ドイツの緑の党は当然「原発反対」です。そして石炭も反対なんだけど、現実は石炭を使いながら原発をなくすというリアルな戦い方をしている。ドイツは今でも十数パーセントは原発に依存しているけど、2022年になくしますよね。一方で、石炭の比率は46%ですよ。

原発をなくすプロセスが整備されている。

橘川:それに対して日本の反原発は、石炭も原子力もノーだと言っちゃうから、説得力がないんですよ。それでも今、その声が強いのは単純に原油価格が安いからです。

 これまで原子力が争点になった選挙が2つありました。2014年の東京都知事選は脱原発の細川・小泉連合が惨敗した。もう1つは2016年の新潟県知事選で、これは予想に反して(再稼働反対の)米山(隆一)さんが勝った。まったく逆だったわけです。じゃあ、どこが違ったか。端的な違いは原油価格です。都知事選は1バレル100ドルで、新潟知事選は40ドルでした。40ドルだったら発電コストなんて関係ないが、100ドルだと貿易赤字になっちゃう。今は60ドルぐらいで微妙な線になってきているけど。

原油価格で選挙結果が決まったわけですか。

橘川:日本の世論ってバカじゃない。80ドルを超えてくると、もう圧倒的に「原発を動かせ」ということになります。今の水準だと「原発ゼロでもいいや」という方に振れます。

でも、橘川さんが言うように、原発の危険性を下げながら、オプションとしてゼロにもできる状態を作るべきですね。

橘川:そうなんです。国民は確かに再稼働イエスかノーかというと、ノーの方が多いんです。しかし、即時ゼロは少数派なんですよ。これは矛盾しているはずなんです。だって、再稼働反対って、要するに即時ゼロじゃないですか。国民の本当の心は、僕が言ったような感じで、長期的に原発を減らしていく方向であって、「すぐにはなくせないね」と。やっぱり、資源小国だから原発というオプションはまだ持っておいた方がいいねと。これが世論だと思うんだけど、政府が司令塔も戦略もないまま、こそこそと再稼働しているみたいだと(思われている)。だから再稼働を聞かれると、ノーと言っちゃう。

要するに古い原発の再稼働はやめると。

橘川:古くて小さいやつはノーに近いです。ただ、リプレースと再稼働で、例えば北海道だったら泊3号機だけだとか、東北だったら東通と女川の3号機とか。そうすると、たぶん15%ぐらいになるんです。そして、原発が比較的新しくて大きいものになっていく。それが、私が中間派と言われるゆえんです。この方が国民の支持は得られると思いますよ。

なぜ安倍政権はできなかった。

橘川:政治家は原発を語りたくない。それから電力会社は、今みたいなことを言えないんですよ。もう伊方2号機なんて事実上廃炉を考えていると思うんだけど、ぎりぎりまで言いません。大飯の1、2号機だって、廃炉だと言われていたけど、ぎりぎりまで言わなかったので。

 すごく不幸な話で、もう突破口はJR東海方式しかない。「国の助けを借りず、自分たちでリニアを造ります」と言うように、「自分たちで原発をリプレースします」と言うしかないんですよ。

政官が動かなければ、原発のリスクを下げるにはそれしかない。

橘川:僕は3・11からずっと同じことを言っているんだけど、「荒唐無稽な漫画家」とか言われている。でも、現実はそっちの方に向いているかもしれない。まあ、行かないかもしれないですよ。僕は阪神ファンだから、だいたい負けることになっているんです(笑)。

 でも、これしか解はないと思います。