暗黙知が増えるとアウトプットが減る

最近では、大企業が「オープンイノベーション」という掛け声の下、社員の副業を認めたり、スタートアップに出向させたりするケースも増えてきています。本業以外に副業を持ったり、複数の仕事を同時にこなしたりした方が、相互に刺激しあって両方のパフォーマンスが上がるということでしょうか。

村上:その通りだと思います。量と質が異なるインプットのソースがあると、やはり自分の刺激になるんですよ。同じところに居続けると、同じような環境で同じような人としか会話しないじゃないですか。

 人間が変わるには、引っ越すか、友達を換えるしかないとも言われますよね。そういう状況が仕事にあれば、それが同じ業界だったとしても、異なる環境と人から違う情報が入ってきます。情報の多様性があると、ふといろいろなことがつながって、「あ、これやったら面白いかも」とか気づきを得られるんです。

大企業の中にいると、どうしても発想も乏しくなるし、動きも遅くなると言われます。村上さんはヤフーを2011年に辞めて、2012年に復帰しました。その間、ソフトバンクグループの孫正義社長が後継者育成のために開催している「ソフトバンクアカデミア」のプレゼン大会で、孫社長の前でモバイル対応が遅れているヤフーの経営を痛烈に批判したエプソードは有名です。ヤフーも当時、そんな「大企業病」に陥っていたのですか。

村上:やはり、外を見なくなっていたというのはありましたね。インターネットサービスを作っていても、競合調査などはするんですが、どういうサービスをお客さんが求めているのかという実感があまりない。実際に競合サービスを使っていないと、ヤフーのことしか知らないということになる。わらじを1つしか履かないと、情報が不足してしまうというか、お客さんと離れ過ぎてしまうという弊害は、やはりあると思います。

 当時は、リーマンショックの影響などもあって、緊縮財政の中でなんとか利益を出そうと必死になっている状況でした。ムードは暗かったですし、組織も既存ビジネスの最適化をゴリゴリやる体制になっていました。マネジャーにとっては、新しいことをやろうという雰囲気はほとんどないというか、余裕がありませんでしたね。

 それと、同じチームに長くいると、暗黙知が多くなってアウトプットが減ってしまうんです。

暗黙知が多くなると、アウトプットが減る?

村上:ええ。いろいろなことを言語化しなくなると、アウトプットが減るんです。なんとなく、「あれやっておいて」と言うだけで、「あれ」が分かる状況というのは、日々の仕事はスムーズに回ると思います。だけど、他の部署の人と新たなプロジェクトをやったり、社外とパートナーシップを組んだりすると、「あれ」では通用しない。

 プロジェクトを上手く回すには、暗黙知を前提にせず、できる限り言語化して、周囲の理解を得ながら進めなければなりません。1つのわらじしか履いていないと、そういう言語化する能力がどんどん落ちていきます。やはり、いろいろなところに顔を出している方が、違うバックグラウンドの人たちと仕事をするので、言語化する能力は高まるし、それによってプロジェクトを数多く回せるようになってアウトプットも高まります。