ソシオネクストの強みとは何でしょうか。

西口:通信ネットワークから産業機器向けまで幅広い製品を手掛けていますが、1つ挙げるなら画像処理用のLSI(大規模集積回路)でしょう。当社のLSIを使えば動画がサクサク動きますし、多少粗い画像でも美しく表示する高画質化技術も得意としています。

 しかし、こうしたLSIを日本メーカーに売っているだけでは、なかなか展望が開けません。台湾や中国のメーカーに販路を拡大しても、競合は激しい。だから私は、テレビの「向こう」を標的にしようとしています。テレビメーカーは既に、映像サービスの「キャスティングボード」を握れなくなっていますから。

グーグル、アップルがテレビを牛耳る

キャスティングボード、とは。

西口:「スマートTV」と呼ばれていますが、放送と通信の融合がいよいよ本格化しています。ここのビジネスで今後、最も利益を出すのは誰か。私はサービス提供者だと考えています。

 (定額制動画配信サービスの)米ネットフリックスがその象徴です。米グーグルや米アップルもテレビに接続する端末を開発し、サービス提供でビジネスを拡大しようとしています。これらのサービス提供者のニーズをつかめない限り、テレビ向けの事業は考えられない時代になっています。

 スマートフォンの世界は、既にそういう構造になっています。業界内で最も利益を稼いでいるのは米アップルですが、彼らは製造には関わらない。モノ作りでは利益が稼げないと見切り、サービスで稼ごうとしているわけです。この仕組みを、我々半導体メーカーはもっと学ぶ必要があります。

 テレビの「向こう側」にいるサービス提供者が望む機能を察知し、それを半導体に反映させていく。そして、単なる部品ではなくシステムやソリューションの形にしたうえで提供する。そこまでしなければ、新しいビジネスを生み出すのは難しい。

工場を持たない「ファブレス」という事業形態を選んだのは、モノ作りで稼げないと思っているからですか。

西口:当社の場合は、それ以外に選択肢はありませんでした。半導体の製造プロセスは進化が著しく、ソシオネクストの事業規模で最先端の工場を持つのは不可能です。必然的に、ファブレスにならざるを得なかったわけです。