自分でコントロールする感じは欲しい

PBを置く分だけナショナルブランドのバリエーションは減ったとしても、消費者はあまり気にしないかもしれませんね。一方で、今苦戦しているアパレル業界などを見ますと、なかなかアイテムやブランド数を絞り込めずにいるようです。一般に小売業も、取扱品目数の拡大傾向はあまり変わっていないようです。やはり絞り込むことによって売り上げが減少することが怖いようですね。

山本:やっぱり幅広いニーズに応えるという部分は必要という意識は確かにあるでしょうね。ただ一方で、どんどん新商品が売れなくなっているという実態もあるんです。売り上げにおける新商品の比率というのは、徐々にですけど下がってきています。生活の中で情報量が多くて、仕事も忙しい、お金も限りがあるという人たちは、新商品に目が向かないんです。

 最近、コンビニなどで店内で、複数商品をコラボさせるキャンペーンなどが目につきます。「これとこれを組み合わせて」というような。「このジュースとこのお菓子を一緒に食べるとイチゴケーキ味になりますよ」というような例です。これは消費者の心を開かせようとしているんだと思うんですよね。どんどん今心を開きにくくなっている時代になっているので。例えばソーシャルメディアで話題にしてもらえるようなことを考えているのでしょう。

企業は新しい消費の時代に対応できるように、マーケティングの考え方を見直さないと生き残れないかもしれない。どんなことが重要になるでしょうか。

山本:ちょっと、これまでと矛盾するようなことを言うんですけど、消費者はやっぱりどこかで自分が選ぶ余地というか、選んでいる感じは欲しいのです。絞り込みの中から選ぶという行為は、実際は誰かに選んでもらったものを選んでいるんですけど、最終的に、この2~3個の中から僕はこれを選んだよという、自分自身でコントロールをした感じがあるから、自分がちょっとうれしい気持ちになれるという。それを残してあげなくてはいけないということはあると思うんです。企業にとっては、どうやって、我々の絞り込みの方がいいよというふうに信じてもらうのかということが大事な時代にはなってくるんじゃないのでしょうか。「この人たちがやってくる提案はいい感じに自分にフィットするよね」と、思ってもらえるかどうか。そういう提案してくれるメーカーや流通が選ばれるようになるのでしょう。

最近の小売業の動きでは、「オムニチャネル戦略」などを提唱して、インターネット企業と提携する小売業が増えていますね。先日は米ウォルマートと傘下の西友が、楽天と提携しました。こうした動きをどのように見ていますか。

山本:例えば、すぐに実現できる話じゃないといわれていますけど、ネットサイトでの購入履歴を基にある顧客を分析して、その顧客が店頭に行ったときに、店頭のサイネージを使って推奨する。「山本さんはネットで、比内地鶏を買っている人ですね」という情報が連動したときに、「山本さんようこそ、今日は店頭で比内地鶏は20%オフですよ。あなたのためだけのオファーです」みたいなことが、将来は可能になると言われています。

「お任せ」意識が強まる、消費者心理の傾向を考えた時、従来のような巨大な売り場で豊富な商品を並べることが必ずしも、有利にはならない環境であり、むしろ負の遺産になりかねませんね。

山本:大きい店がだめとか、そういうことでは私はないと思うんですけど、商品の見せ方は大きいお店の中でも、どんどんセグメントとして追求していく必要があると思います。ここのお店が好きじゃなくて、ここのお店のここのコーナーが好きだから、行こうと思ってもらえる。顧客が「お任せ」できるようなセグメントをいくつも持っていることが、大切な時代になってくるんだと思います。