ストーカー被害を受けてしまったら
それでも不幸にしてストーカー被害を受けてしまった時は、どうしたらよいのでしょう。
小早川:ハッキリ「苦しい」と自分の感情を述べること。曖昧にしたり嘘をついたりしてはいけません。そして、相手のストーカー行為が、脅迫や暴力、または住居侵入といった法を破るような、危険なレベルになっていれば、すみやかに警察に行く。同時に、ストーカー行為が起きそうなところ、家や勤務先や学校などには状況を伝えて、関係者によるサポート体制を築くことが望ましいです。
被害者が自分で加害者に一対一で対応できるのはせいぜい、「やり直したい」「辛い気持ちをわかってほしい」などと言われるレベルまでです。それを超えて相手が攻撃的なレベルになったら、一対一で何とかしようと思わない方がいいです。
自分ひとりで対応しようと思わずに、代理人を立てるということは重要なポイントです。きちんと落ち着いて相手と話ができる人であれば、自分(被害者)の気持ちを代弁してくれる親や上司、先輩のような代理人でいい。もしくは弁護士。相手の言動の結果、社会生活を普通に営むことができないレベルまで行ってしまうと、被害者と加害者だけで問題を解決するのはもうムリなんです。
自他の「境界線」を守りながら、ハッキリ思いを伝える
相手に思いを伝える時に気を付けることは。
小早川:繰り返しになりますが、ハッキリ思いを伝える。ただし、伝える時には、自他の「境界線」を守るということを大切にします。
自他の境界線を守るとは、「あなたは〇〇だ」と決めつけて言うのではなく、「私はあなたは〇〇と考えます(感じます)が、どう思いますか」というように、自分を主語にして自分の考えとして伝えるということです。相手から気分の悪くなるようなことを言われたら、「私は、あなたの言った〇〇という言葉が苦しかった」というように押し返します。要は感情的にならずに感情を伝えることです。
セクハラの被害にあったと感じた時は、「私は今、あなたがしたことをセクハラだと(苦痛に)感じました」といった言い方をします。
「あなたはセクハラしたじゃないですか」などと決めつけた言い方をすると、言われた方は反論したくなります。「私はあなたが怖い」「私は苦しかった」「私は嫌だった」ということだけ言えば、「あなたは私が怖いのか」などという気づきを得て、相手も傷つかずに謝罪する可能性が高くなります。被害者側もまた、そうした言い方によって、自分の感情と自分自身を切り離すことができ、冷静に自分自身をとらえることが可能になります。
ストーカーと対話する時も私はこうした言い方をしています。私の言い方の影響を受けて「境界線」を段々と感じ取れるようになり、ストーカー行為は「越境行為」だと理解できるようになります。「あいつを殺してやりたい」と言っていた加害者が「僕はあの人を殺したいと感じるほど苦しいです」と表現の言葉を変えたとき、別の存在になっているのです。
この言葉遣いは、内在する感情を言葉にして外在化し、扱えるようにする「ゲシュタルト・セラピー」という心理療法の影響を受けています。被害を受けている人が、加害者にメールなどで拒否を伝える場合などには、この療法の考え方や言葉遣いはとても役に立ちますので、本やセミナーなどで学ぶことはおすすめです。
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