ストーカーは相手に対する加害の認識はあるのでしょうか? もしくは自分が相手に迷惑をかけていることを「わかっちゃいるけど、やめられない」のでしょうか。

小早川:多くのケースでは加害の自覚はないです。警察に警告され、初めて「自分はストーカーなのか」と本気で驚く人も。自分のしている行為を客観的に把握できていない。自分は加害者でなくて、相手から拒絶された「被害者」「弱者」「敗者」だと思い込んでしまっていることが多いのです。

 ストーカーの中には意味なくプライドが高く自己中心的な人がいて、「自分は特別なのに」とか「素晴らしい自分に別れを告げる相手が間違っている」と思い込んでいるため、被害者感情がとても強く、報復を望むことさえあります。相手を苦しめることでプライドが保持されるからです。こういうタイプは、そもそも交際の動機も、自分の妄想や虚像を一緒に支えてくれる「賛美者」を求めることにあります。

 シニアに限らず、多くのストーカーに共通する「被害者意識」に立ち向かい、解消することが根本解決には不可欠です。私が被害者から相談を受けて加害者に会いに行くのも、加害者の誤解や思い込みを正していくためなのです。

 彼らの言い分を100も200も聞いて、「自分が苦しいのは相手に責任があるわけではない」と分かるまでは、対話を中心にして関わります。平均3か月、早い人で一か月、遅ければ半年くらいかけて日々対話を重ねた結果、「自分の言い分は間違っていた」「相手は自分と離れる自由もあるのだ」と理解して、ストーキングを止められる人は8割くらいです。一方、「わかったけれど、やめられない」残りの約2割のストーカーには対話から心理療法に切り替えます。

「自分は被害者だ」と主張する加害者

そういう加害者は、小早川さんに会うのを拒まないのですか?

小早川:むしろ、喜ぶ人の方が多いです。相手(被害者)から無視され、連絡が取れずにストレスが溜まっている時に、間接的とはいえ相手との接点が持てるからです。ここにしか加害者がカウンセラーと会う動機はないといってよいでしょう。だから、喜んで会ったものの、私から被害者の本当の気持ち──つまり「好きではないし、もう会いたくない」ということを聞いた時には、ストーカーはいきり立ち、激昂して暴言を吐くこともあります。

 しかし、ストーカーが立ち直るには、まずは事実をはっきりと認識するところからしか始まらないのです。ストーカーの多くは「まだ見込みがある」と期待していることが多い。そう期待している間は心は方向転換できません。もちろん最悪の被害を避けるために、加害者に接触して介入する際は細心の注意を払います。被害者を安全な場所に移すこともあります。こうして加害者との対話を始め、そして対話では治らない加害者を「治療」に結びつけることは、本当に必要なことだと私は考えます。

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