昨年(2017年)に全国の警察が把握したストーカー相談は前年比1.5%増の2万3079件、2000年にストーカー規制法が施行されて以来、最多だったことを3月15日に警察庁が発表した。

 最近の相談の特徴として、加害者が一方的に被害者に目を付ける「面識のない人間からのストーカー行為」や、交際相手の裸の画像をネット上に拡散させる「リベンジポルノ」に関する相談などが増えているという。ストーカー規制法が施行されてから既に17年以上が経つのに、なぜ事件や被害は一向に減らないのか。

 これまで約2000件の被害相談に対応、罵倒されたり暴言を吐かれたりしながら500人以上の加害者と対峙してきた、ストーカー問題の解決に取り組むNPO法人「ヒューマニティ」理事長の小早川明子さんに、最近のストーカーの傾向とトラブルを回避する方法について聞いた。

(聞き手は、柳生譲治)

「盾」となってストーカー被害者を守る

小早川明子(こばやかわ・あきこ)氏
NPO法人「ヒューマニティ」理事長
1959年愛知県生まれ。中央大学文学部卒業。心理カウンセラー。ストーカー問題、DVなど、あらゆるハラスメント相談に対処している。1999年に活動を始めて以来、500人以上のストーキング加害者と向き合い、カウンセリングを行う。主な著書に『ストーカー 「普通の人」がなぜ豹変するのか』『「ストーカー」は何を考えているか』など。

小早川さんは、ストーカー被害者に対する支援を1999年に始めて以来、500人を優に超える加害者と向き合ってこられたと聞いています。以前放送されたテレビのドキュメンタリー番組では、興奮したストーカーが、被害者の代理人である小早川さんを激しく怒鳴りつけているショッキングな場面もありました。取り乱した加害者に会うことも少なくないと思うのですが、会う時に恐さは感じないのですか?

小早川明子氏(以下、小早川):自分に対するストーカーではなく、他人(被害者)に対するストーカーの場合、案外怖さは感じないものです。ストーカーの関心は被害者にあるのであって、自分にではありません。ただ、ごくまれにですが、罪悪感などの感情がまったくない、いわゆる「サイコパス」のような人に出会うことがあるのも事実です。そういう情がまったくなくて残酷な人、自分の痛みにも鈍感な人に出会った時は、やはり身の毛のよだつような恐怖感を味わうのも事実です。

ご自分がストーカー被害にあったことが、この世界に入るきっかけだったとか。

小早川:私の場合、恋愛感情のもつれというわけではなく、仕事をめぐってストーカー行為を受けました。もう20年以上前になります。30代で事業を立ち上げて業績も順調だったのですが、よく知る男性から「自分も経営に加えろ」と言われ拒絶したことをきっかけに、ストーカー行為が始まりました。「会社に火をつける」と言われたこともありました。

 そんな時、「自分の代理人として、相手に会ってくれる人がいてくれたらいいのに」と、心の底から思った経験がありました。「盾」になって自分を守ってくれる人ですね。結局、私の場合、元警視庁刑事の人に間に入ってもらい、幸い問題は解決したのですが、この経験があって同じような苦痛を味わっている人を救いたいと思いました。

子供の頃、親から適切な愛情をもらえなかった過去

ストーカーにはどういう人が多い?

小早川:多いのは孤独な人。心の内をオープンにして話すことができる相手のいない寂しい人ですね。また、仕事や人間関係で強いストレスを受けている人、些細なことにひどくプライドが傷ついてしまう人や、自分を愛することができない人、人を信じられない人、見捨てられる恐怖を持っている人……。

 そうした心理的特徴や傾向を持つ人が多いのですが、ストーカー加害者に至る背景として、子供の頃に過酷な境遇だった人の割合は高いです。例えば、親からの虐待を受けたり、過保護・過干渉、ネグレクトなどにより、適切な愛情をもらった経験の少なかったりする人です。一例を挙げれば、「三鷹ストーカー殺人事件(注*1)」の加害者の池永チャールストーマス被告は、幼児の頃からひどい虐待を親から受けてきたといいます。

(注*1)2013年に東京都三鷹市で発生した殺人事件。関西在住の池永チャールストーマス被告が、元交際相手の東京・三鷹市の女子高校生にストーカー行為を繰り返したのち自宅前で刺殺した。2人はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて知り合い、遠距離恋愛をしていたことがあった。撮影した女子高生の画像をネット上に拡散させたことから、「リベンジポルノ」の問題が顕在化するきっかけにもなった事件である。

ストーカーに多いタイプは、孤独な人や強いストレスを受けている人。(写真:bialasiewicz/123RF)写真はイメージです