減らぬ残業、上がらぬ給料。日本企業の労働環境の悪化に歯止めがかからない中、自分と家族のため、相応の資産を早めに貯めアーリーリタイアを狙おうとするビジネスパーソンも少なからずいるはず。そうした人達が「引退する当面の目安」として、古今東西、漠然と掲げているゴールが「資産が1億円を超えること」だ。

 だが、「40~50代で1億円程度の資産で引退すると、やがて苦境に立たされかねない」と警鐘を鳴らすマネーの専門家がいる。なぜ1億円もの資金がありながら、余裕を持ってアーリーリタイアできないのか。本当に安全に引退するには、いくらの資金が必要で、どのようなポートフォリオを組むべきなのか。資産運用のプロに話を聞いた。

聞き手は鈴木信行

<b>玉川 陽介(たまがわ・ようすけ)</b><br /> 1978年7月神奈川県大和市に生まれ。1997年12月、学習院大学1年時にジイズスタッフを創業。2002年3月学習院大学経済学部経営学科卒業。米国留学を経て、2010年8月コアプラス・アンド・アーキテクチャーズを創業。『勝者1%の超富裕層に学ぶ「海外投資」7つの方法』(ぱる出版)『海外ETFとREITで始める インカムゲイン投資の教科書』(日本実業出版社)など、著書多数。
玉川 陽介(たまがわ・ようすけ)
1978年7月神奈川県大和市に生まれ。1997年12月、学習院大学1年時にジイズスタッフを創業。2002年3月学習院大学経済学部経営学科卒業。米国留学を経て、2010年8月コアプラス・アンド・アーキテクチャーズを創業。『勝者1%の超富裕層に学ぶ「海外投資」7つの方法』(ぱる出版)『海外ETFとREITで始める インカムゲイン投資の教科書』(日本実業出版社)など、著書多数。

「1億円程度では、余裕のあるアーリーリタイアは難しい」とのことですが、にわかには信じられません。まず、「仮に今、手元に1億円があり、そのカネを元手に投資商品を購入し、その分配金や配当だけで暮らせ」と言われたら、資産運用のプロとしてどういうポートフォリオを組むか、提示してもらえますか。

玉川:現物不動産はなしですよね。

できれば投資商品のみ、それも、ETFか投資信託でお願いします。

玉川:海外でしか購入できないものや、かなり専門的な商品を組み入れてもいいですか。

大丈夫です。こう見えても経済誌のデスクを何年も勤めていますし、略歴にも「資産運用は得意」と明記しています。オフショアでもヘッジファンドでもあらゆる金融商品をご活用ください。

玉川:分かりました。まずは1億円のうち3000万円はVXXのショートに使います。

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玉川:残りの7000万円のうち6000万円はPFFもしくはPGXなどハイイールド債のETFに入れます。

???

玉川:VXXとは「iPath S&P500 VIX Short Term Future ETN」のティッカーで、VIX指数と連動するETNです。PFFは「iShares U.S. Preferred Stock ETF」で、PGXは「PowerShares Financial Preferred」のことです。余った1000万円は、BDC業界最大の銘柄「Ares Capital Corporation」(ARCC)でも加えましょう。

??????

玉川:PFFなどは大体年率6%くらい出ていますからね。ARCCも9%近い配当が得られます。でも一番の柱はあくまでVXXのショートで、これは「Time decay」、つまり「オプション取引の時間的価値減少」を有効活用した戦略で…。

先生、ストップ、ストップ! 参りました。まずVXX、VIX指数から教えてください。

注:ここから先、少し難しい話になりますが、「働かず、投資信託の分配金でのんびり暮らしたいなあ」と思っている人には避けて通れない議論です。なお当面働く気がある読者の方は3ページまで飛ばして頂いても、人生に大きな支障は生じません。

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