その後は順調?

松本:いえいえ。1件実績を作ったところで、簡単には受注は取れませんでした。丸3年くらいは営業に行っては受注がないと発注できないという繰り返し。何とかして実績を作らないと市場に食い込むのは無理だということで、無償の点検をずいぶんとやりました。おたくの州の橋を指定してくれれば、無償で点検しますので、精度や価格を見てください、と。

 すると、「うちでは案件はないけれども紹介状を書いてあげよう」と言ってくれる人が出始めまして。この紹介状のおかげで他の州でも仕事が取れるようになりました。

オハイオとケンタッキーをつなぐブレント・スペンス・ブリッジ(写真:ネクスコ・ウエスト USA提供)

突破口はエンジニアの推薦状

 米国では、道路でも橋でも最後に成果品を出す時にプロフェッショナルエンジニア(PE)がサインしないと受け取ってもらえません。PEの責任は重く、何か不備があって橋が落ちれば個人であるPEが訴えられます。それゆえに、社会的な地位はとても高く、PEの紹介状は大きな信用になります。

 日本の場合、どちらかというと組織で仕事をするので、NEXCO西の技術部長が自分でいい技術だと判断して推薦状を書くことはないと思います。一方で米国はPEが個人の責任でサインする文化がありますので、自分がいいと判断すれば紹介状にサインすることも厭わない。

無償で実績を積んだことで、評価してくれる人が現れたんですね。

松本:米国人は自分でいいと思えばいいと評価してくれます。受注が取れ始めたのは、こういう米国の仕事の進め方のおかげだと思います。

米国法人にPEはいるんですか?

松本:私がPEの資格を取りました。結局、仕事を受注する際にPEがいないと元請けになれないんですよ。PEがいない時はどこかの会社の下請けに入り、元請け会社のPEにサインしてもらう必要があります。でも、それでは元請けの入札に参加できないので。

無償で点検し始めた時に日本の本社は何か言わなかった?

松本:最初の3年間は黒字にならないというのはある程度は織り込み済みでしたので、3年は我慢してほしいという話はしていました。無償ばかりで心配をかけた時期もありましたが、頭を下げて我慢してもらって。4年目から受注が取れ始めたのでよかったですが、ずっと赤字が続いていれば撤退も考えたかもしれません。

ここまでの実績は?

松本:無償の案件を除けば20件ほどです。有名なところではオハイオ州のブレント・スペンス・ブリッジがあります。シンシナティにあるオハイオ州とケンタッキー州をつなぐトラス橋です。ワシントンDCのメトロの橋脚やニューヨークのビルの外壁もやりました。コンクリートであれば何でもOKです。

ワシントンDCのメトロの地上橋梁部分(写真:ネクスコ・ウエスト USA提供)

エリアは全米?

松本:ほとんど東海岸です。というのも、飛行機で機材を運べないので、ネバダ州やカリフォルニア州だと遠すぎて移動できないんですよ。

ワシントンDCからサンフランシスコまで、車だと40時間以上かかります。

松本:(受注実績のある)インディアナ州にしても、丸10時間かけていきましたから。今13人の社員がここにいますが、とてもじゃありませんが営業の手が回りません。

他に変わった案件はありますか?

松本:あとはブラジルのダムでしょうか。

ブラジル!