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でも、基本は分かりました。ここからが本題です。最近目立つ「部下の残業による書類送検」ですが、摘発を残業削減につなげるなら、書類送検された“残業強要上司”がそれをきっかけに、自らの行いを多少なりとも反省することが欠かせない、と思うんです。部下の残業で書類送検されると人生はどうなるのでしょう。まずは当局から連絡が来るんですよね?

多田:ケースバイケースですが、検察から「あなたが送致されてきました」と電話が来ることもあれば、労基署から「あなたを送致しました」という連絡が来ることもあります。

それは、家の電話それとも携帯、あるいは会社ですか。

多田:それもケースバイケースです。一般的には労基署が捜索に入った段階で、関係者の事情聴取をしますから、その時点で被疑者の連絡先は聞いています。

衝撃の結論 書類送検された人の末路は…

それからどうなりますか。

多田:検察から呼び出しがきます。本来はこの時点で被疑者に出頭義務はないんですが、意味もなく拒むと「証拠隠滅の恐れあり」などと判断されかねませんから普通の人は従います。そして事情聴取されます。

検察から連絡が来て、呼び出し食らって、事情聴取。ここまででも相当なプレッシャーです。そこから先はどうなります? 「会社の利益と自分の出世欲のため、部下を過剰労働で追い詰めてきたが、こんな目に合うなら割に合わないな」――。“残業強要上司”にそんな気付きを与える末路が待ち受けているのでしょうか。

多田:検察の事情聴取で終わりです。

え…。そこから先は何も起きない?

多田:労働基準法違反では、よほどの特殊事情がない限り、書類送検されても個人は不起訴処分になります。

不起訴ということはお咎めなし?

多田:使用者が従業員に強制した残業の結果、重大な事故や死亡者が発生した場合は、起訴の可能性もありますが、普通は不起訴です。前科も付かず、戸籍に傷が付くようなこともありません。とはいえ、芸能人などの場合は、最終的に不起訴になっても、「書類送検された」と報道された時点で、イメージダウンなどのダメージを負うケースが多いと思います。

でも一般人の場合は、そこまでの影響はありませんよね。子供の受験に影響もなければ、クレジットカードが作れなくなることも、一部の国に入国できなくなることも、住宅ローンが組めなくなることも、奥さんがママ友の間で窮地に立たされることも、ない?

多田:ありません。不起訴ですから。法人には罰金刑が課されますし、大企業の場合、報道で法人としての信用力が低下したり、ブラック企業との噂が立つかもしれません。でも、書類送検された本人に、重大なダメージはないです。