ワイスボード:どのようなコミュニティに参加して何をしたのか、エッセイを出してもらう。その際に、その学生を受け入れたコミュニティの責任者にも、リポートを書いてもらうつもりだ。双方向の声で評価したいと考えている。

 家庭での貢献も同様にレポート形式を取る。放課後に習い事や塾に通うことは悪いことではないが、そういうことができる環境にない学生の放課後の苦労も評価すべき。その方が平等だろう。

 嘘の報告もあり得るが、入試審査を手がけている執行部は、本当に取り組んだ内容を書いているレポートと、周囲の大人に指導されて書いたレポートは見分けがつくと語っている。

卒業後、若者たちは熾烈な競争社会に入っていくが…。

ワイスボード:それは当然のことだ。我々は入試を一部改正してより平等なものにしたいというだけで、ひとたび入学すれば、自分が学ぶ個々の教科で手抜きが許されるわけではない。卒業する際には、学んだフィールドについて十分な知識がついているはずだ。

「まず自分が成功してから、他人のことを考える」

どういう経緯でこの改革がスタートしたのか。

ワイスボード:2013~14年にかけて、我々の研究チームは全米33の中学、高校を選び、そこに通う中高生を対象に学校と教育における価値観についてアンケート調査を実施した。人数は延べ1万人で、この国のあらゆる人種、カルチャーを網羅している。

 その結果は驚くべきもので、およそ8割の学生が自分の人生で価値あることは成功を収めることだと述べ、助け合いの精神や平等の精神を自己実現よりも高く評価した学生は2割ほどしかいなかった。「自分が幸せと感じない人生には何の意味もない。まず自分の人生を満ち足りたものにしてから他人の幸せにも力を注ぐ」というようなコメントを添えた学生も何人もいたうえに、30%の中高生が、かつていじめの被害に遭ったことがあると答えた。

 結果を深刻に捉えた我々は、複数の大学の入試審査執行部、人格教育のエキスパート、カウンセラー、高校の教員たちを集め、この結果についてディスカッションを繰り返し、自分たちの所属する大学にレポートを提出した。今回の入試システム改正の動きは、このアンケート結果に端を発している。

 ハーバード大はまだ検討している最中だが、既に我々の提案を受け入れて、入試制度の改正に踏み切った学校もある。

2014年に、ペンシルベニア大学の19歳の学生が成績を苦にして自殺するという事件があった。成功しなければならない、という学生たちの強迫観念はどこから来ている?

ワイスボード:我々の調査では、学生の親の81%が他人への気遣いや人助けの重要性を家で子供に語っている。一方で、学生たちに「親があなた方に望んでいるものは何か」と聞いたところ、「他者への思いやり」と答えた学生は19%、「幸せになること」が21%、「よい成績」が54%だった。