仕組みだけは欧米から輸入し、「二重構造」の社会に

泉谷:800年とは言いません(笑)。でも、個人主義という観点ではおそらく400年くらいは遅れているのではないでしょうか。そんな風に相変わらず「ムラ社会」が継続されているのが実情なのに、社会の仕組みだけは欧米からどんどん導入している。例えば「成果主義」とか「コンプライアンス」とか。しかし、やはり環境は相変わらず「ムラ社会」なので、それは表面的に真似たに過ぎない「二重構造」になってしまっていて、そこに齟齬が出てくるわけです。そして、そのツケは個人に押し付けられているのです。

 例えば、建前上は欧米企業のように「自分の意見をはっきり述べるように」と社長や上司から言われますが、生真面目な人がその指示を本気にしてはっきり意見を述べたりすると、「空気が読めない」とか「強調性がない」とか言われてしまう。あるいは「働き方改革」ゆえの時短の指示に従い、さっさと帰ったりすると、白い目で見られてしまう。

 ちなみに私は、病院に勤めていた時には「同調圧力」には決して従いませんでした。自分の仕事が終わったらさっさと帰るようにしたのです。欧米では、ほかの人がまだ仕事をしているから帰りにくいなどということはありえません。生真面目な人が多い日本では、「ふざけた奴だ」と思われるかもしれませんが、案外それくらいで丁度いいのではないかと思いますよ。

 本題に話を戻しましょうか(笑)。

 こうした「ムラ社会」ゆえの同調圧力との軋轢によって、精神的に追い詰められる人が日本にはとても多いのです。そういう人たちには、是非、勇気を持って「ムラ社会」から自覚的に離脱し、本当の自分を生きることをお勧めしたいと思います。例えば私のクリニックでも、同調圧力の高い企業で生きづらそうにしている人が、何かの機会に海外に出たり英語を使ったりすると、まるで別人のように生き生きするというケースも少なくありません。

「自分は自分、人は人」という前提を忘れない

最初におっしゃられた「硬い勤勉性」をもった人ほど、同調圧力にやられてしまいそうな気がします。ムラ社会の同調圧力に屈しないためにはどうしたらよいのでしょうか。

泉谷:コロンブスの卵のような言い方になりますが、最初から「ムラ」に入らないことです。例えば、あえて最初からランチのグループに入らないとかですね。「ムラ」に入らなければ、当たり前のことですが「村八分」といういじめに逢うことはないのです。「ムラ社会」では、その場にいない人が悪口のターゲットにされてしまう可能性はもちろんありますけれど、いくら陰で悪口を言われても、自分の耳に届かなければ、それは言われてないのと同じなんです。そうやって一人ひとりが、ある程度の覚悟を持って個人主義的に自立していくことでしか、日本は根本的に変わっていけないのではないかと思います。「自分は自分、人は人」という当たり前の前提を忘れないことです。