そうしたら、あるリスナーから「アンダーワールドが暗黒街という意味だと知らない米国人などいるはずがない」という手紙が来て(笑)。そう言われても、実際に目の前にいるので…。

 学校の英語のテストでは○か×か、「正しいか」「間違っているか」を問われることが多いのに対し、実社会において使われている英語には「グレー」の部分が多いのです。

テキストの原稿は毎回どのようにして作成されているのですか。

杉田:今でもビニェットの原稿はまず私が書きます。私の書いた英語にネイティブのライターが手を入れてくれて、それをまたパートナーのヘザー・ハワードさんがさらに編集します。翻訳はかつて私の秘書をやってくれた女性にお願いしています。

 日本語になってからもNHKの担当者から質問や状況確認が入ります。どんどん新しい言葉や使い方が出てきますから、なるたけそういうものをテキストに反映させたいと思っています。英語は生き物ですから、「マスター」なんてできないのです。ですから、身構えないで、まずはやってみることが大切なんだと思います。

変えてはいけないことと、捨てるべきこと

 そして、古いものを捨てて新しいものを吸収する姿勢が大事です。情報を収集して、整理して、役に立たなくなった知識は捨てなければいけません。長年の経験なんて、ただそれだけでは役に立ちませんから。

 例えば、ジャーナリストの仕事の仕方も昔と今では様変わりしています。60年代くらいまでは、記者が伝書鳩を取材現場に連れて行き、原稿を送ることがありました。遠隔地などに取材に行き、伝書鳩の足に原稿とフィルム入れた筒を括り付けて、本社に送ったりしていたわけです。また、昔、英国や豪州の新聞に、1面に白いスペースが残ったまま発行されているものがありました。

 締め切り間際に大事件が起こったら、そこに急きょ記事を突っ込んで間に合わせるため、そうしていたのです。そんな時代があったね、と、遠い過去の仕事の仕方を知識として知っていたとしても、現実の実務には何も役に立ちません。今は、デジタル対応がますます重要な時代になっています。

 伝書鳩だろうとデジタルだろうと、報道メディアにとって大切で決して変えてはいけないことは、正しく事実を伝えること、事実確認を怠らないことです。ここがおろそかになると、読者の信頼を失います。

 技術革新が進んでも変えてはならないことが何なのかを理解して、決しておろそかにしないことこそが、これからの時代、大切だと思います。