グローバル化と並んで、情報化・ネットワーク化も企業の競争環境を大きく変えています。日立の鉄道ビジネスはどう対応していますか?

ドーマー:世界の鉄道ビジネスを10~20年のスパンで見れば、デジタル技術との連携がカギを握るのは間違いありません。規模はある程度拡大することができましたが、今後はさらにデジタルを核にしたソリューション力を強化していく必要があると考えています。

進化する「予測メンテナンス」

 ちょうど4年前、私がCEOに就任した頃は鉄道車両にセンサーをつけ、車輪の摩耗度合いなどを調べて、故障確率を低減する「プレディレクティブ(予測)・メンテナンス」が広がりつつある状況を紹介しました。英国ではこのソリューションは既に導入され、フル活用されています。運行車両のデータは日々蓄積されていますから、そうしたデータを活用して、どのような保守が可能なのか。日立のIoT(モノのインターネット)プラットフォームである「ルマーダ」と組み合わせるなど、そのバリエーションを広げる議論が進んでいます。

 さらに、デンマークのコペンハーゲンでは、駅構内の混雑度合いを計測し、列車の運行管理を調整するシステムを実験しています。駅構内で電車を待つ人数を解析し、混雑度合いに応じて、列車の時刻表を動的に調整するものです。これを実現するためには、単に車両間の間隔を調整するのではなく、運行車両全体を統合的に管理する必要がありますから、鉄道システムすべての運用ノウハウが不可欠です。本格運用が始まれば、世界で初のソリューションになると思います。

 コペンハーゲンの実験からも分かる通り、今後は車両というハードの開発以上に、ソフトウエアの開発力が競争力を左右することになると思います。その意味でも、日立グループは米バンタラ(旧日立データシステムズ)、日立コンサルティングなどのグループ企業の資産があります。今後は、こうした企業との連携がさらに強くなっていくと思います。

メーカーではなくオペレーターとしてのサービス開発力も求められるようになるわけですね。

ドーマー:IoTの世界で起きるのは、まさにこうした変化だと思います。品質の高い車両を開発することは、引き続き大切ですが、それ以上に、顧客の収益を最大化するためのデータの活用が大切になってきます。

鉄道ビジネスの収益構造もハードの売り上げからサービスの売り上げへと変化していくのでしょうか。

ドーマー:大きなトレンドはそうかも知れませんが、必ずそうなるとも言い切れません。例えば、先のコペンハーゲンの実験では当初、IoTによって運行管理を効率化すると、必要な車両を減らすことができるため、我々のビジネスにとってはネガティブに働くのではないかとの懸念がありました。

 確かに、運行会社にとってはハッピーですが、我々にとってはあまり嬉しいことではありません。ところが、実験を進めると、逆のことが起こりました。運行効率が上昇し鉄道輸送のキャパシティが増えたため、電車を利用する人が増加しました。その結果、より多くの車両が必要になったのです。さらにオペレーターからの信頼を獲得できれば、今後のビジネスの広がりも期待できます。IoTのもたらす変化は、やってみないことにはどう転ぶか分からないというのも事実だと思います。