英国のEU(欧州連合)離脱が、現実味を帯びてきている。英国のキャメロン首相はEU残留を国民に説得する材料として、EUの改革案を提案してEU諸国から合意を取り付けたが、それも力不足だったようだ。今年6月の国民投票で、英国はEUから離脱するのか、残留するのか。タイムリミットが刻々と近づいている。ユーロ危機への不満から火がついたEU離脱騒動について、みずほ総合研究所の上席主任エコノミスト、吉田健一郎氏に話を聞いた。

英国がEU(欧州連合)から離脱するか、残留するかを問う国民投票が今年6月に実施されます。現地の世論調査などを見ていると、離脱が現実味を帯びてきているように見えます。
吉田:最新の世論調査(You Gov)の結果を見てみましょう。EU離脱を求める人が38%で、EU残留を求める人の37%を若干上回っています。この調査は、2月21~23日にかけて実施されました。キャメロン首相が提案したEU改革案が2月19日に合意したことを受けて実施されたものです。
改革案の主なポイントは後ほど解説しますが、合意前の2月3~4日の調査から世論がどう動いたかを見ると、今後の動向を推察できます。
2月3~4日の調査では、EU離脱派が45%と、EU残留派の36%を圧倒的に上回っていました。つまり、改革案の合意を受けて、離脱派は7ポイント減ったわけです。しかし、この結果から離脱する可能性が大きく下がったと見るべきではないでしょう。残留派は1ポイントしか上昇していないからです。では、意見を変えた離脱派は、どこに行ったのでしょうか。今回の調査の結果では、「わからない」「投票しないだろう」が増えています。要するに、態度を保留にした人が増えたに過ぎません。
この世論調査から透けて見えるのは、多くの英国民にとって合意内容は不十分で、積極的な残留支持に転じる理由とはならないという印象を持ったということではないでしょうか。
実際、合意発表後に、ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏や閣僚6人が離脱支持を表明するなど、与党内でも離脱派が勢いづいています。キャメロン首相は、離脱を支持するか残留を支持するかは個人の判断に任せる考えです。
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