月森:画一化したサービスは、コストを下げるのには有効ですが、参入も容易になるので、結局、シェアを取った取られたの消耗戦になる。アナログでも、ひと手間をかけて、より満足度の高いサービスを提供して、ニッチなナンバーワン、オンリーワンになる。それが事業としての生き残りの道だと考えています。
と言って、手間を増やせば良いわけではない。新たなサービスを生み出す際に、私が大事にしているポイントの一つは、業界の常識や思い込みを疑ってみること。それには、異文化の人たちと一緒にやってみるのがいい。私どもは「もっと役に立つ、面白いことを実現したい」と同じ目標を共有するベンチャー企業と様々な共同事業を展開しています。
山本:シリコンバレー発の「キーボ」は、新進のITベンチャーと古くからの「錠前屋」企業がタッグを組んで「最高のインタフェースの鍵」を提供しています。スマホにタッチするだけで自宅玄関の鍵の開閉ができる快適さは、互いのアイデアと技術を持ち寄ったからこそ、他より一歩抜きん出るレベルに仕上げることができたのではないか。「既存の鍵の概念を変えて、もっと便利にしよう」という同じ目標を目指すタッグの好例だと思います。
「所有」の概念を変えていく
お二人が変えようとしているのは…。
山本:所有の概念です。
サマリーはユーザーの物欲を刺激する側面があるとして、目指すところは、要らないものまでどんどん買いましょうということではありません。

「すべてが手のひらに収まる」ということは、すべて所有できるということにとどまりません。預ける、手放すということも自在にできようになれば、従来の所有という概念から解放されます。
と言って、全部手放せ、ということでもない。それは豊かな感じがしません。常にアクセスできるところに、スペースが無限にあり、やり取りも自在という感覚は、「捨てない幸せ」を満たしつつ、「持つ楽しみ」を進化させていくことを可能にします。
皆さんそれぞれが、本当に自分に必要なモノに囲まれる生活をイメージし、それを実現するのに役立つサービス。それが、私たちの目指すところです。
月森:モノを預かるというより、託される存在になりたい。私どもにモノを託すことで「モノとのより良い関係」が築けるように、新しい価値が生み出せるようにしていく。やれることはたくさんありますから、どんどん進化させていきたいと思います。
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