松浦:もう一つ、日本ならではの特徴は、若い世代ほど経済的な不安が強いということです。「年を取ることの最大のマイナス面は何だと思いますか?」という問いについて、「経済的に自立できなくなると思う」と答えた割合は20代、30代が最も多く、グローバルよりも圧倒的に高い数字なのです。

気持ちはよく分かります。社会保障は将来永続可能なのかと。日本の社会保障は、諸外国より水準がすごく高いのですが。それでも不安が募り、貯金をしなければという意識が強いですよね。

松浦:日本で行ったインタビュー調査でも、みんなそういうことを言うんです。様々な社会不安が、若者の自信や言動に大きな影響をもたらしています。

 若い世代ほど、年齢について考えたり、年を取ることを気にしています。特に日本では、経済面の不安が強い。この点について企業や政府が、もっとできることがあるのではないかと思います。

「年を取ると得られるもの」に着目してほしい

松浦: 2つ目の原則は、得られるものに着目するということです。70代の人たちが思う「年を取って一番よかったこと」は、どんなことでしょうか。

 幸せになるための方法が分かること。お金に余裕ができること。たくさんの友人ができること。中でも、「もっと自由になれること」が、世界的に一番多い回答でした。

 続いて、「年を取ることを表す表現」について全世代にアンケートを取ったところ、上位2つは「知恵や経験が増えていくこと」が32%。「気力や体力が徐々に失われていくこと」が26%でした。ポジティブとネガティブ、非常に対極的な結果だったのです。

 これが70代に限定しますと、3分の2が年を取ることに対してポジティブに捉えています。若い頃より、受け身ではなく、保守的でもなく、信心深くもない。もっと良心的なものを重視し、進歩的になったということです。

 ところが日本の場合は、グローバルの風潮とは逆になっています。知恵や経験が増えていくことを「ゲイン(得られるもの)」、気力や体力が失われることを「ロス(失われるもの)」と分けて考えてみましょう。

 日本では「ゲイン」24%に対し、「ロス」が49%。圧倒的にロスが大きいのです。年を取ることについて、日本人は非常にネガティブに捉えているということです。

特に女性はそう感じるかもしれません。

松浦:ただ、年代別に見ますと、「年を取る」ということをポジティブに捉えられるようになってくるのです。「年を取ることについて、あなたの気持ちにポジティブな影響を与えていますか?」という問いに対して、30代が最も低い48%。以降は上昇していき、60代は65%となっています。

 ところが、「年齢」について世間やメディアで話題になるものは、「ロス」に焦点を当てたものが多いんです。

年金が減らされるとか、病気になりやすいとか。基本的に危機感を煽っていますよね。

松浦:そうなんです。基本的に、若い時にどんどん成長して、その後は衰退するというイメージを前提にした取り組みが多い。「後期高齢者」「リタイア」「オバさん」など、年齢に関連するネガティブな表現が、この傾向を強めています。

 多くの人は、年を重ねるほど豊かで幸せになると感じています。ところが社会には、逆にネガティブなイメージを植え付けるような表現が蔓延しているのです。企業もメディアも、もっと「得られるもの」に着目した話題やサービスを考えると、世の中は大きく変わっていくのではないでしょうか。

「実年齢」より「個人」に焦点を当てることが重要

松浦:新しい年齢の捉え方を反映したマーケティングをするための3つ目の原則は、「数字に囚われない」ことです。

 冒頭でも触れましたが、人の価値観や行動を予測する基準として、「年齢」は参考にならなくなってきています。

 そこで年齢に対する価値観をもう少し深く調べてみますと、大まかに次の5種類に分けられます。

 得られるものにフォーカスする人は、年を取ることに対して「永遠の冒険家」「コミュニティのお世話係」というイメージを持ちますし、失うものにフォーカスする人は、「将来を恐れる人」「若さを追い求める人」と考えます。中間にいるのが、「具現化をする大人」です。いずれもほぼ20%前後の割合です。

 同じ調査について「子が独立した親」に限定した結果をまとめますと、「永遠の冒険家」が38%と最も多くなり、次に「若さを追い求める人」が29%となっています。実年齢ではなく、ライフステージによってイメージは大きく変わってくると言えます。

 続いて男女別に調べると、さらに深く掘り下げることができます。