実年齢は上がっていても、「すごく年を取った」とは感じていないということです。気持ちの上では、年を取ったと感じる感覚が希薄になっている。

 しかし、様々な広告やテレビ番組を見ると、何となく「若者はこう」「年寄りはこう」という固定観念が染みついています。これは世界共通です。

企業は「生活者の年齢の捉え方」を正しく把握していない

松浦:次は、「各業界は、高齢化についてどの程度理解していると思いますか?」という質問です。

 全体の2~3割しか、「企業は高齢化に対して理解している」と感じていません。ビューティー業界は、アンチエイジングの商品やサービスを提供していますから、比較的高い数字になっていますが、その他の業界は基本的に30%を割っています。つまり、消費者側からすると、企業の実態把握が弱いということです。

要するに、「70代のスポーツならゲートボール」とか、「膝が痛くなったらこの健康食品を」とか、いわゆる型にはまったマーケティングをしている、と。しかし、実際に消費者の感覚はそうではない。

松浦:そういうことです。82歳にしてiPhoneのアプリ開発者として活躍している若宮正子さんは、こんなことをおっしゃっていました。

「私は型にはまったおばあちゃんではない。でも、世の中には型にはまったものが多く、自分にとってちょうどいいものない。例えばレストランに行くとセットメニューばかり。私は残したくないと思うから頼めない。もっとお金を出してもいいから、自分にマッチしたものが欲しい。当然かもしれないけれど、サービスを提供する側が高年齢を経験したことがないから、こちらのニーズをイメージできないのかもしれない」

 一般的に、「昔のおじいちゃん、おばあちゃん」のイメージに囚われているから、今の高齢者たちの本当の姿はなかなか掴みにくいんです。だから、適切なサービスや商品をうまく提供できているかという点には、まだまだ課題が残ります。これは日本だけではなく、世界共通です。

 今、新しい年齢の捉え方を反映したマーケティングが必要な時代に入っているのではないかと思います。そこで我々は、こういうふうにしたらいいんじゃないかという4つの指針を提示しました。

若い世代ほど、年を取ることに対する不安が強い

松浦: 1つ目が、「年齢」「年を取ること」に関する問題のアプローチを若い世代から始めるということ。先ほども触れましたが、若い世代の方が、年を取ることや死ぬことに対する恐れが強いのです。

 例えば、「自分が死んだ後、皆に忘れられるのでは」と一番心配しているのは、どの世代でしょうか。答えは、20代の53%です。年を取るほど「心配」の割合は下がっていき、70代では21%になります。

 それから、年を取ることを気にしているのも、やっぱり若い人なんですよ。

 「いつも年齢・年を取ることを気にしている」と答えた割合は、30代をピークにだんだん下がってきます。

 ここで一つ目の「アプローチは若い世代から」という原則を日本に当てはめてみましょう。日本の場合、グローバルと比べて、年齢を気にしている人がずっと多いのが特徴です。

 年齢を気にする割合は、グローバルでは30代をピークに下落していきますが、日本は20代以降上昇していくのです。

日常会話でもよく出てきますよね。「もうオレも年だしさ」という言葉が。

松浦:そう、常に気にしているのです。

70代で、日本は世界の2倍以上の数字ですから、顕著な差ですよね。

松浦 本当にそうなんですよ。今おっしゃったように、「年相応」とか、「年甲斐もなく」とか、会話の中で色々な言葉が出てくるじゃないですか。「アラサー」「アラフィフ」なんていう言葉も、全部年齢を気にしているからあるようなものです。

そうですね。