坪井:社員本人は一生懸命やっている。なのに、細かなミスが多くなったり、上手く頭が働かなかったり、本人も気づかないうちに効率が落ちてしまい、残業してしまう――。そんな方は、往々にして、自律神経のバランスが崩れている恐れがあります。人の体というのは自律神経に支配されています。自律神経というのは交感神経と副交感神経という二つの神経がシーソーのように上がったり下がったりするシステムで、片方が優位の場合は片方が劣勢になります。例えば、昼食後に寝ていたり、ぼーっとしている社員がいますよね。

います。

坪井:あれは気合が入ってないのではなく、自律神経的には当たり前のことなんです。物を食べると人の体は副交感神経が優位になり、消化器が活発になります。それで上手く消化出来るのですが、副交感神経が優位になると体はリラックスし、眠くなってきます。そのぐらい自律神経は人間が活動する上で大切なのですが、そのバランスが崩れると、交感神経を高め集中しなければいけない時間帯に、副交感神経が働いて効率が下がってしまったり、逆に、リラックスしなければいけない時間帯に、交感神経が働いて意味なく頭が冴えてしまったりします。

「残業ダラダラ社員」は自律神経に問題がある

その結果、例えば夜眠れず、昼間ぼーっとしてしまい、作業が進まず残業が増えてしまったりする、と。

坪井:そもそも、現代社会には様々なストレスが溢れています、通勤電車の中、仕事の人間関係…。言いたいことも言えず我慢を強いられることも多い。ストレスは東洋医学で言う「肝」に影響します。「肝」は自律神経も司っているので、肝が乱れると自律神経も乱れるのです。

鍼灸はそうした自律神経のバランスを整えるものだ、と。

坪井:鍼灸は東洋医学に基づいています、東洋医学では心と体は別々に考えません。互いに影響をしあうものとして、心と体が総合的にバランスよく釣り合うことが健康であると考えるのです。例えば、「内関」というツボは安神作用があり、自立神経の乱れを安定させるなどと言われています。東洋医学は一箇所を治すのではなく、複雑に絡み合った症状の原因を正し、正常に巡るよう導く作業なのです。怪しい世界と思われがちですが、きちんとしたロジックに基づいて鍼や灸を使用しています。

――そうなんですか。

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