先進国の中でも最低レベルにある日本企業の生産性。大手広告代理店の過労死事件などもあって、全国的に働き方を見直す動きが高まっている。一億総活躍社会の実現を掲げる安倍政権も長時間労働の是正に本腰を入れ始めた。
だが、国や企業が様々な施策を打ち出しても、当の働く社員達が本気で働き方を変えようとしなければ、残業削減はままならない。日本企業の社員の中には、大した仕事もないのに頑なに残業を続ける人がいるのも事実。「残業代が減るとローンが払えない」「家に帰っても居場所がない」――。理由は様々だが、そんな“残業好き社員”が所属長クラスになった暁には、部署全体に「有給なんて、とんでもない」「定時帰りなんて、ただじゃおかない」的な空気が漂うのは時間の問題だ。そうした中、「部下であれ上司であれ、残業が多い社員には、たっぷりお灸を据えると良い」との主張を掲げる鍼灸師がいる。“残業好き上司”に日々悩まされている社員には願ってもない話だが、どうお灸を据えるのか。詳しい話を聞いてきた。
聞き手は鈴木信行

東京都生まれ。サービス業や会社員などを経験した後、社会の疲れた人々を見たり、トレーニングやスポーツの疲労などで自身も悩んだりした経験から、様々な症状で悩む人の助けになればと思い、30代半ばで鍼灸の勉強を始める。鍼灸免許を取得し、さらに鍼灸教員資格を得るために5年間に及ぶ学生生活を終え、鍼灸院「Five Elements」を東京都世田谷区に開業するに至る。働くサラリーマン、特に男性会社員向けのメニューが充実しており、他県からも多くの客が訪れる。
非常に斬新な残業防止策だと思います。どんなに口酸っぱく言っても働き方を見直そうとしない“残業好き社員”も、所詮は人の子。終業時間と同時にアタマにもぐさを乗せられ火を付けられれば、さすがに帰宅するに違いありません。働き方も根本的に見直すでしょう。オフィスで煙を出すと火災探知機が作動するのではないかなど、心配な面もありますが。
坪井:あのー、少し誤解されているようですが、私が言っているのはそういう話ではありません。
ああ、なるほど。“お灸”というのは物の例えでしたか。ではどんな“お灸”がいいんでしょう。「残業したら罰金」「残業したら降格」。いろんな“お灸”があると思いますが。
坪井:いえ、物の例えでもなく、私が提言したい残業対策には、やはり実際に鍼灸を活用します。
ほう。とりあえずお話を伺いましょうか。
鍼灸で残業を減らすメカニズム
坪井:ここ最近、社員の残業が増えることに敏感になっている企業が多いと聞きます。私も鍼灸師をする前、企業に勤めていた時期がありましたが、その頃は残業が美徳とされる時代でした。私自身は「残業はプライベートを圧迫する」という考えでしたので、どうして残業しないのかと会社から注意されていた記憶があります。ところが今は逆だと言う。社員の残業を増やせと言うならともかく、減らせと言うなら鍼灸に出来る事があります。
それは初耳です。
坪井:残業が発生する理由はいくつかあると思います。一つは「作業量と処理能力が一致していない場合」です。これについては、適切な人員配置などにより会社側がその社員の仕事量を見直すしかなく、鍼灸の力を持ってしても如何ともし難い面があります。しかし、「作業量は適切なのに、本人の作業効率が高まらず仕事が終わらない場合」であれば、鍼灸による改善が考えられます。
どのように?
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