自動車分野、攻めに回れるか
日本はどのようなスタンスで「対話」に臨むべきでしょうか。
細川:1990年代、クリントン政権と合意した日米包括経済協議では、最初は日本主導で「包括的」な議論を進めようとしても、いざ始まると個別テーマでの交渉が先鋭化し、日本は「守り」の色合いが濃くなってきました。
ポイントは「攻め」と「守り」の「双方向性」をどれだけ確保できるかです。攻められたことに対応するだけでは、相手の思うつぼです。それでも過去、日本では世論やメディアも含めて発想が「守り一辺倒」になり、米国からの要求ばかりに注目が集まりがちでした。
いかに攻守を逆転させるかがカギを握ります。農産物では「守り」の要素が多いでしょうが、日本として攻めのカードに使えるのが自動車です。自動車分野でも日本市場について各種の要求が予想されますが、米国の真意は自国の市場と関税を守ることにあります。
例えばTPPでは、米国向け完成車に課せられる2.5%の関税が、25年かけて撤廃されることで合意していました。仮に米国が農産物でTPP以上の要求をしてくれば、それをより短期間で撤廃することを日本から要求できるかどうか。また米国の規制のあり方にも、注文を付けることが欠かせません。
米国以外の国をどう巻き込むかもポイントになりそうです。
細川:日本にとってのキープレーヤーとなるのが豪州です。牛肉分野などでは、(日本との貿易において)豪州は米国よりも優遇されることになります。豪州は対中国という点でも重要な存在になります。その豪州を引き合いに出し、米国抜きでのTPPの協議を進めるなど、揺さぶりをかけることも必要です。逆に言えば、そうした手段抜きに米国と一対一で対峙しては、ゲームにならないわけです。
さらに、中国をどう念頭に置くかというのも欠かせない視点になります。サイバーや知的財産権、国有財産など、先だっての合意事項の中には、「中国」という単語を明示的には使ってないにしても、明らかに中国を念頭に置いた表現が見られます。
鉄鋼の過剰能力問題など、日米で取り組まなければならない共通の課題は多くあります。米国にとって最大の課題である対中政策において、日本との協力が有効な手段であるという認識をいかに米国に持たせられるかがが、対話の最大のテーマとなるでしょう。
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