日米首脳会談で合意した日米新経済対話は早ければ4月にも始動する。麻生太郎副総理・財務相とペンス副大統領がトップを務めるこの対話の注目点や今後のシナリオを、かつて経済産業省米州課長として日米交渉の最前線に立った経験を持ち、日経ビジネスオンラインの特集サイト「トランプウオッチ」のレギュラーコメンテーターでもある細川昌彦氏(中部大学特任教授)に聞いた。
(聞き手は熊野 信一郎)

中部大学特任教授、元・経済産業省米州課長。1955年1月生まれ。77年東京大学法学部卒業、通商産業省入省。「東京国際映画祭」の企画立案、山形県警出向、貿易局安全保障貿易管理課長などを経て98年通商政策局米州課長。日米の通商交渉を最前線で担当した。2002年ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。2003年中部経済産業局長として「グレーター・ナゴヤ」構想を提唱。2004年日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長。2006年経済産業省退職。現在は中部大学で教鞭をとる傍ら、自治体や企業のアドバイザーを務める。著書に『メガ・リージョンの攻防』(東洋経済新報社)
安倍首相や麻生副総理・財務相が方向性や開始タイミングに言及するなど、日米新経済対話についての関心も高まってきました。どういったポイントに注目すべきでしょうか。
細川:先だっての日米首脳会談での大きな成果の1つは、この経済対話に米国のナンバー2であるペンス副大統領を引っ張り出せたことにあるといえます。
こうした枠組みでは、日本では外務省が窓口となり、総理にリポートするのが通例でした。それが今回、麻生副総理がトップを務め、対話の相手として副大統領が選ばれたことは極めて大きな意味を持ってきます。
過去、米国は超大国との対話の責任者として副大統領を任命したことはあります。しかし日本が相手で、しかも経済分野だけで副大統領を据えることは異例です。
そのため、米国サイドの事務方も抵抗したと聞いています。麻生さんがペンスさんと会って直接説得したことに加え、首脳会談でも安倍首相が「こちらは副総理を出す」と切り出し、このような形に持ち込んだ。
米国サイドの体制が整っていない段階だからこそ、ペンス氏を引っ張り出せたともいえるでしょう。事務方による「積み上げ型」の交渉では、とても考えられなかった成果です。
いい体制でスタートを切れると。
細川:麻生副総理が財務大臣であることも大きな意味を持ってきます。従来、こうした二国間の対話では、外務省が多くの省庁を巻き込みながら、取りまとめ役になろうとします。その一方で、財務省は自分たちの世界だけ、言い換えれば「財務金融マフィア」の世界だけで話を進めたいと考えます。これはいずれも役所の伝統的な行動原理です。
今回は、マクロ経済政策も話し合われることになるため、財務相を兼ねる麻生副大臣がトップとなることで、対話・交渉しやすくなる構図が生まれるでしょう。その意味では、日本に「麻生副首相・財務相」がいることは、非常に幸運でした。
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