
(聞き手は鈴木哲也)
中国経済の変調を要因とする倒産の増加に警鐘を鳴らしています。最近の象徴的な倒産事例は何ですか。

東京商工リサーチ・常務取締役情報本部長。1980年、銀行勤務を経て東京商工リサーチ入社、2011年に取締役情報本部長。2015年から現職。財務省研修所や全国信用金庫研修所で講師を務める。リーマンショックの影響について参議院の参考人として呼ばれたほか、自民党政務調査会などで中小企業の実態を説明する機会も多い。中小企業金融円滑化法の制定にも関与した。
友田:精密機械部品の製造などを手掛けるテラマチ(愛媛県西条市)が今年1月に民事再生法の適用を申請しました。小惑星探査機「はやぶさ2」の部品加工の一部を担った実績もあり、人気テレビドラマの「下町ロケット」に登場する佃製作所のように高い技術力を持っています。中国の建設機械需要の拡大を見越して、積極的な設備投資をしてきたのですが、最近の中国の景気減速による建機需要の縮小で、見込んでいた受注が消えて、資金繰りが悪化したのです。たとえ技術力があっても抗しきれないぐらいに、中国の景気減速は大きな流れで進んでいるということを示す事例です。
東京商工リサーチでは「チャイナリスク関連倒産」という集計をしていますね。2015年の動向はどうでしたか。
友田:件数では76件で、2014年と比べて1.6倍。負債総額では2346億2800万円で前年比で11.5倍と大幅に膨らみました。零細企業から中堅企業以上へと影響が広がり始めているため、負債総額が増えているのです。チャイナリスクといってもリスクの種類は複数あります。初めは生産地である中国の人件費の上昇によって製造や輸入のコストが上昇し、日本のアパレル企業などが影響を受けました。例えば昨年10月、下着製造のアイリス(徳島県美馬市)が破産開始決定を受けたのは中国での人件費上昇が一因です。
今は、だんだんと中国の景気減速と需要の減少が影響した倒産が増えてきています。市場としての中国が変調し、中堅以上の企業にも影響が及ぶという「第2段階」にあるのです。例えば、海運中堅で東証一部上場の第一中央汽船は2015年9月に民事再生法の適用を申請しました。赤字決算が続いていたところに、中国の景気減速によって需要が一気に落ち込み、追い打ちをかけたのです。
2016年の見通しはどうですか。
友田:流れを見ていると昨年まではチャイナリスクの入り口で、いよいよ今年はチャイナリスクが本格化するかもしれないと思いますね。
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