日本の観光業の多くは零細業者

日本の観光業界はほとんどが零細企業と言われています。訪日外国人を受け入れるといっても、使えるお金も限られるでしょうね。

宮崎:そうです。観光庁の「観光地経済調査」を基に我々が作成したデータによると、国内の観光業者のうち、従業員数が4人以下の零細事業者が63.4%と、ほぼ3分の2を占めています。彼らの年間設備投資額は30万円ほどにすぎません。外国人観光客の受け入れ環境を整えようとしても、予算が限られます。

これだけインバウンドが増え、中国人などの爆買いがあっても、それによって潤っているのがホテルや一部の小売りなどに偏っていて、地域やそこで事業をする観光業者にはあまりカネが落ちないという現実もあります。いわゆる地方の観光業が恩恵を受けていないことが、意識改革につながらない原因なのではないでしょうか。

宮崎:確かに、たくさん人が来ているのにあまりうまくいっていないじゃないかという状況は各地で見られます。

 例えば、大型のクルーズ船を寄港地として誘致して、1000人、2000人規模の団体客を呼び込んでいる町があります。国の施策によって港で免税手続きができるようにして、訪れた人を何十台ものバスに乗せて近くのショッピングセンターなどに送り込んでいます。

 でも、彼らがいくらショッピングセンター内のドラッグストアなどで大量に買い物をしたとしても、結局、地元にはおカネはあまり落ちません。それでは「バタバタと人はやってきたけれど、あれは一体何だったんだ」となりかねません。

現に九州や西日本ではそういうケースが見られますね。

宮崎:今、クルーズ客が一番多いのが九州ですが、このところ少し意識の変化や施策の見直しも見られます。クルーズも量を追い求めるだけじゃく、質も大事なんじゃないかと。

 大きな船で大勢の人に来てもらい、大量に買い物をしてもらうことを否定するわけではなく、その利便性はこれからも高めていく。同時に、例えば少し小型のクルーズ船で九州各地の世界遺産などをゆっくりと回って過ごしてもらうといったプランも提供する。そういう動きが出てきています。

 そうすることで、一度に来る客は少なくても、その地域にお金が落ちるように消費してもらうことを促すのです。これからのインバウンド政策を考える上で、「量」ばかりではなく「質」を求めていく、そうすることで継続的に来てくれるリピーターを増やすというのはとても重要なことだと思います。

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