スマホの普及などまさにそうですが、外的な環境の変化がインバウンド市場拡大の追い風になっているわけですね。

宮崎:そうです。ただ、だからと言って日本政府や自治体の施策による効果がないわけではありません。我々の分析によると、ビザの緩和は国の政策として非常に効果が大きかった。円安でもインバウンド増の効果は得られますが、ビザの緩和は実施した場合とそうでない場合とで次元が変わるほどのインパクトをもたらします。

 プロモーションについては、「特にこれが」というより、絶え間なく続けてきたことがよかったと思います。予算額は韓国やタイなどと比べるとまだ少ないですが、2016年度はすごく増えています。こうしたプロモーションも継続して実施することが重要です。

これを一過性のブームに終わらせず、安定的にインバウンド市場を伸ばしていくには何が必要でしょうか。

観光業や観光地の「意識改革」こそ重要

宮崎: 少し大きな話になりますが、外国人を受け入れるための環境づくりで重要なことがあります。

 インバウンド市場は確かに右肩上がりに伸びています。しかし、観光業とか各観光地という視点で見ると、まだまだ日本人相手の方が多いですし、消費額もずっと大きい。別にわざわざ外国人客に頼らなくても、日本人観光客の相手だけで何とかやっていけるという観光地も少なくありません。そんな中でどれだけ本気になって取り組むか、インバウンドに対応するか、という受け入れる側の意識の問題が挙げられると思います。

語学の問題などあるでしょうし、日本人を相手にするよりも手間がかかるのは確かですから、「何も外国人に来てもらわなくたって十分だ」と考える業者や観光地があっても不思議ではありませんね。

宮崎:でも、言葉の問題というのは特に語学堪能な人が欠かせないというわけではないんです。さっきのスマホの例もありますし、各自治体が取り組んでいますが、それこそ指さし確認表のようなものを作って示せば手間やコストは掛かりません。そもそもやろうと思うかどうかの話です。ですから、観光業者や観光地の店などが本気で外国人客を取り込もうと真剣に取り組めば、受け入れ側の態勢はぐっと高まるでしょう。

 インバウンド客を受け入れるための課題として、標識などで外国語表記を増やすとか、Wi-Fi環境をどうするかとか、決済にクレジットカードをもっと使えるようにするといったことがよく指摘されます。こうしたハードの問題は分かりやすいのでよく言われますが、これは次の段階の話なのではないかと思います。

 これから安定的にインバウンド客を増やすことを考えるなら、地域全体で受け入れる側の意識をまず変えるべきです。特に今はまだ固定客というのはどこもそれほど多くはありませんが、今後安定的に受け入れるには固定ファンをつくることも重要になります。それには地域全体で迎える姿勢が大事です。

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