名前だけの顧問・相談役もいれば、会社の成長に寄与している顧問・相談役もいるのではないでしょうか。

石田:顧問や相談役の存在は企業文化のようなもので、企業によって名称や役割、報酬などが大きく変わります。経済産業省のアンケートでも結果が出ていますが、そもそも社内に何人いるのかすらわからないという会社もあるのです。

 問題なのは、例えば社長が重要な決定をしようとしても、事前にOBに根回ししなければならないといった文化が色濃く残っていることです。人間は誰でも、自分の過去から独立した判断を下すことは難しいでしょう。例えばある相談役が社長だった時に導入したある施策が、今になって問題を起こした場合、その相談役はそのことを認めたくないはずです。

 経済が右肩上がりの時代であればいいかもしれませんが、現在は過去の延長線上にない新たな技術・ビジネスを生み出していく必要があります。その時に、アカウンタビリティーなしにそれを阻害しかねない方向で影響力を持つ存在は問題といえるでしょう。

企業からは「そうかもしれないけど、うちはちがう」という反論もありそうです。

石田:今回のポリシー変更では、あくまで相談役・顧問についての定款変更に反対というだけで、相談役や顧問がいる企業のトップ選任案に反対するわけではありません。確かにあいまいで、ROEや社外取締役の数のように、明確なラインを決めることが難しいテーマです。

 それでもあえてポリシーに盛り込んだのは、多くの投資家に話を聞いても、顧問や相談役についてポジティブな声がほとんどないからです。もちろん100人中100人が同じ意見ではないですが、全体で見ればそれが投資家の総意と言っていいのではないでしょうか。

 ですから企業は少なくとも、相談役や顧問の存在が自社にとってどのような意味があるのか、続けるべきかどうかを改めて見直すべきではないか、というのが投資家からのメッセージです。

議論を呼ぶことも目的であると。

石田:期待しているのは、これをきっかけに企業の中の人に考え、動いてもらうことです。例えばある若い社員がこうした問題意識を持ったとしても、これまでは声を上げることはとても難しかった。こうしたガイドラインがあることで、社内でも「投資家は一般的にこう考えています」と言えるようになる。そうして議論が始まり、見直すきっかけの1つになるという効果も狙っています。