トランプ氏は大規模減税を公約に掲げて選挙戦を戦いました。下院共和党もポール・ライアン下院議長を中心に税制改正案のブループリントを発表しています。

:米国における大規模な税制改正は1986年のレーガン改正が最後。それ以降、30年以上抜本的な税制改正は実現しませんでした。日本も同じだと思いますが、税制改正は選挙区ごとに勝者と敗者が生まれるため、同じ政党内でもコンセンサスを得るのが困難です。ただ、今回はトランプ大統領が減税に意欲的な上に、上下両院を共和党が押さえているため抜本的な税制改正の機運がこれまで以上に高まっています。

税制の抜本改革実現を目論むライアン下院議長(右)とトランプ大統領(写真:Zach Gibson/Getty Images)

「世界一高い」米国の法人税

なぜ抜本的な税制改革が必要なのでしょうか。

:法人税に特化してお話ししますが、理由は2つ、法人税が世界一高く、ワールドワイド課税(企業が海外で稼いだ利益を配当で自国内に戻す際に、その配当に対して法人税を課す税制)のままだからです。

 まず米国の法人税率は州税を含めると約40%で、先進国の平均がざっくり20%後半ということを考えれば、「世界一高い」と言い切ってしまっていいレベルです。よく米国企業の実効税率は実際には低く、法定税率が高くても問題はないという指摘があります。ただ、実効税率が低いのは税金対策に多額のコストをかけて低税率の国に利益を移転させているため。高い法人税が企業に負担を強いているという点で問題があるのは変わりません。

 トランプ大統領は選挙期間中、法人税率を15%まで引き下げると主張していました。共和党のブループリントでは法人税20%をうたっています。タックスヘイブン(租税回避地)かどうかの境目は法人税率20%を目安にすることが多いので、トランプ案の15%はもとより、共和党案の20%でもかなりのインパクトがあります。

 もう一つのワールドワイド課税は、米国外で上げた利益を配当で米国に持ち帰ろうとした時に課税される制度のことです。日本も含め、世界の国々は海外法人の利益の本社への配当に課税しないテリトリアル課税(企業が国外で稼いだ利益には自国の法人税を課さない税制)が中心ですが、米国は税制改革が実現しなかったため、いまだにワールドワイド課税のままです。