2020年の東京五輪を前に、禁煙問題が社会的な課題となっている。「タバコのない五輪」を掲げるIOC(国際オリンピック委員会)は、五輪会場はもちろん、開催都市の屋内施設の禁煙化を目指しているが、日本及び東京では、一部の自治体が受動喫煙防止の法制化に取り組んでいるものの、罰則規定が弱いなどまだ不十分なのが現実だ。

 加えて、多くの非喫煙者は「喫煙問題に関しては、今の日本ではたとえルールを作っても十分に機能するかは不透明」とも考えている。そんな諦めの根拠となっているのが、自治体が定めた「路上禁煙区域」でも意に介せず堂々と吸う喫煙者の存在だ。受動喫煙防止運動の第一人者と共に、路上禁煙区域で吸う人の論理を分析する。

聞き手は鈴木信行

<b>田中 けん(たなか・けん)</b><br /> 1966年1月6日、江戸川区生まれ。新小岩幼稚園卒園、江戸川区立第三松江小学校卒業、 江戸川区立松江第三中学校卒業、東京都立墨田川高校卒業、千葉大学教育学部小学校教員養成課程卒業。1995年江戸川区議会議員に初当選。2015年同選挙に落選。現在、シェアハウスを経営しつつ、介護職員として特別養護老人ホームに勤務。議員への復活当選を目指し充電中。政界におけるアニメ通としても知られ、共著に『100人がしゃべり倒す!「魔法少女まどか☆マギカ」』(宝島社)『「“外国人参政権”で日本がなくなる日』(別冊宝島)。
田中 けん(たなか・けん)
1966年1月6日、江戸川区生まれ。新小岩幼稚園卒園、江戸川区立第三松江小学校卒業、 江戸川区立松江第三中学校卒業、東京都立墨田川高校卒業、千葉大学教育学部小学校教員養成課程卒業。1995年江戸川区議会議員に初当選。2015年同選挙に落選。現在、シェアハウスを経営しつつ、介護職員として特別養護老人ホームに勤務。議員への復活当選を目指し充電中。政界におけるアニメ通としても知られ、共著に『100人がしゃべり倒す!「魔法少女まどか☆マギカ」』(宝島社)『「“外国人参政権”で日本がなくなる日』(別冊宝島)。

区議会議員時代から、最重要政策として「受動喫煙防止」と「きれいな空気の実現」を掲げられてきました。この問題に携わるきっかけは何だったのですか。

田中:12歳の時に、81歳の祖父が肺癌で亡くなったことです。祖父は「SHINSEI」というタバコが好きでした。ヘビースモーカーでしたが、あの時、大切な家族に先立たれる悲しみを嫌というほど味わいました。禁煙問題に関しては、よく「吸う個人の自由も尊重せよ」という主張があります。が、喫煙は本人の健康を損なうだけでなく、将来的に家族を悲しませる可能性が高い上、他人の健康と気分をも害する行為であり、近代社会に認められた「個人の自由」をそのまま当てはめるわけにはいきません。人の身体は、その人のためだけにあるわけではないのです。総合的に見て本人と社会全体の利益になるならば、時に本人の意志を無視してでも、その行動を止めさせることが正当化されるパターナリズム(父権的温情主義)の考え方です。喫煙に関する個人の愚行権が制限される根拠がここにあります。

凄いなと思うのは、そうやって議員時代から関連法制度の制定を呼びかける一方で、自ら「行動」されてきたことです。駅前で長年、公共の場でタバコを吸う人々に、声掛け運動を続けられたとか。様々なトラブルに見舞われたと思いますが…

火のついたタバコを投げ付けられる

田中:江戸川区内の各駅前で活動を始めた当初は、「タバコぐらい吸わせろ」とか「他の奴にも言え」などと怒鳴られたり、火のついたタバコを投げつけられたりすることもありました。また区条例の表題は「路上喫煙禁止」ではなく、「歩行喫煙・ポイ捨て禁止条例」なんですね。このため、喫煙を注意すると「俺は歩行喫煙してない、立ち止まって吸ってる」とか「座って吸ってる」などと幼稚な反論を真顔でする人がいました。また「持っています」と言って携帯灰皿を私の目の前に差し出し、暗に「ポイ捨てはしていないので、条例違反をしていません」とアピールしてきた女性もいました。もっとも、そうした屁理屈を言う人はまだかわいい方で、警察沙汰になったこともありましたね。

どんな状況だったのですか。

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