むしろ「ビジネスしやすい」が事情通の常識

簡単に解雇できないということで言えば、日本国内の方が大変な面があるでしょうね。

瓜生:どこの国でも大変ですし、むしろ日本の方が大変ではないですか。まだ中国はダイナミックにできる方です。

宍戸:日本企業に限らず、外資系企業については、現地で働いている中国の人よりも本国の従業員の方の雇用維持が優先というイメージがあります。海外撤退というと、やはり現地で働いている日本人を守りますね。圧倒的多数の現地の労働者というのは、雇用調整の周辺部分にいる人たちだという認識が実際には否定できないのではないでしょうか。ただ、こうした発想が、前面に出過ぎると、やはり問題です。

日本企業では事業の中国依存度を下げて、東南アジアに拠点をつくろうという流れがあります。例えば、中国と同じく社会主義の国であるベトナムはどうでしょう。

瓜生:経済が成長し、中間層が非常に増えてきています。しかし中国に比べてベトナムの制度が、企業にとってより良いかというと、そんなことはないでしょう。

インドネシアなどは労働争議がかなり多い印象があります。

宍戸:労働争議や地域住民との紛争に関する相談というのは、私どもには比較的多いですね。工場内の用水路をふさいで洪水になった、といった実力行使的なトラブルの相談も耳にします。法律面も、中国の方が透明だという感じがします。

瓜生:労働問題の深刻さは、警察力の強さと比例するのです。中国の公安、警察のレベルというのはそれ相応に高い。治安維持能力がやっぱりあります。インドネシアやインド、ベトナムに比べて中国の方が制度も透明だし、労働争議という側面でも治安という面でも、ビジネスがしやすい国だ、という評価が、むしろ事情通の常識だと思います。

 ただ過去の例をみても、政治的に日中の政治的な関係が緊張すると、ビジネスに影響を受けやすい面はあります。