イメージ戦略から経営の根幹に
ブライトハウスが創業した20年ほど前と比べると、企業における「パーパス」の捉え方も変わってきたのではないでしょうか。
シップマン:2つの点で大きく変わりました。
まず、「パーパス」は企業、特にコンシューマー企業にとって、商品を語る上での重要なツールになりました。その商品の製造方法が社会により良い影響を与えているとか、その商品を買えば収益の一部が社会貢献につながるとか、そうしたストーリーが商品を買う理由に直結するようになったからです。そしてこの傾向は、年々強くなっています。マーケティング上、「パーパス」を表明することの重要性が高まっているのです。
そしてもう1つは、20年前は「パーパス」は広告などを通じて表明するだけで十分でした。それだけで、企業や商品のイメージを向上させたからです。しかし今は、消費者も従業員も、実際の企業行動に結びついているかどうかを重視しています。サプライチェーンの方針や報酬の決め方、労働環境の在り方などが、本当に「パーパス」に沿ったものになっているかどうか、厳しくチェックされるようになりました。
実際、企業は採用活動や社員向けの冊子など通じて、「パーパス」を特に重点的に語るようになっています。また、M&A(買収・合併)といった戦略上、極めて重要な経営判断においても、「パーパス」がより重視されるようになっています。
「パーパス」が従業員に浸透すれば、イノベーションが加速することも忘れてはなりません。1つのパーパスに向かって組織が動けば、そこで働く個人もより迅速に行動できるようになりますし、より大きな目的に自らの仕事が触発されるようになり、新たな発想が生まれやすくなります。
こんなことがありました。ある日用品メーカーと仕事をした時のことです。その会社は多様な商品を展開していましたが、それぞれがバラバラで一体感がありませんでした。そこで、私たちが過去の製品の開発経緯を掘り起こしたら、クレージーな発明家たちがガレージや自宅で開発していたという、普通じゃないストーリーがありました。
そこで、会社のパーパスに「イノベーションを生み出す」という視点を組み込んだのです。その結果、会社の開発者たちのモチベーションが高まり、イノベーションが会社の成長エンジンになりました。その会社の開発者たちはそれまで、社内であまり重要な存在として扱われていませんでした。さらに、その後、製品ポートフォリオを拡充するために同業の会社を買収、株価も上昇したのです。
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