調査結果では、食品・飲料のトレンドが「プチカム(噛む)食感」だと発表しています。

:酸味や苦み、甘み、塩味、うまみ、コク…。面白さや意外性のある五味という点ではもう一巡してしまいました。ですから今後は、味以外の要素を訴求しなければ差別化できません。その際、有効なのが「食感」です。

 先ほども説明したように、朝食は液体化が進んでいますから、柔らかい食感を訴求する。午後の口寂しい時にはグミのような反発系の食感を打ち出し、夜は高級感を演出するために、クリスピー状のものやミルフィーユのようなサクサクした食感を体験してもらう。「味+α」の時代になっているということです。

「プチカム」の好事例として、カゴメが昨秋に発売した生鮮飲料「GREENS」を挙げています。確かにGREENSは、これまでの野菜飲料にはない、野菜や果物の食感を味わうことができます。

:飲料に、素材のゴロゴロとした食感が加わることで、質感を変えることができます。これまでもスムージーのブームはありましたが、スムージーを自分で作ることに対して面倒だと思う層がいるのも事実です。こうした層をいかに取り込むか。これまで野菜飲料を飲んでいた層から見れば、GREENSは野菜や果物の素材感を味わえる分、おいしく感じるはずです。注目商材の一つですね。

カゴメはこの商品を投入するために、新たな設備投資にも踏み切りました。

:野菜や果物といった素材を飲料に混ぜる場合、難しいのが沈殿対策です。沈むと分離しますから。液体と野菜や果物などの素材を均質に混ぜて安定化させるには技術が求められます。さらに衛生面のハードルも高い。ですからこうした商品は、ある程度の資本力と技術力のある大手飲料メーカーしか作れません。食感を追求した商品では、大手メーカーの方が有利になると私は思っています。

 朝食市場を見ると、ヨーグルトでロングセラー商品になっているのが、森永乳業の「森永アロエヨーグルト」です。これにもアロエの食感を楽しめる「プチカム」要素がある。朝食に重いものは食べたくないけれど、食感は味わいたいというニーズに合っているのでしょう。

「軽く食べたい」ニーズに応えられるか

食事回数が増えたこともあって、1回の食事自体は軽食化が進んでいる。「軽く食べたい」というニーズは今後も増えるのでしょうか。

:確実に増えていくと思います。実は食事にかける時間も以前より減っていることが、調査で分かりました。1日における食事の時間を合計しても、1時間にも満たない人がたくさんいたんです。晩ご飯さえ、15分くらいで済ましてしまう。日常生活が忙しすぎるのでしょうね。単身世帯は家事の負担比率も上がるし、残業などによる疲労感もある。スマホの浸透などで、時間の使い方における食事の比重が以前よりも下がってきているという側面もあります。

食生活が根本から壊れているということでしょうか。

:壊れていると言うべきか、進化していると言うべきか…。どちらにしても、「1日3食」というスタイルはもはや過去のものになりました。こうした現状認識の上で、商品開発やマーケティングに取りかからなくてはニーズを見誤ります。

食のスタイルが変わる中で、2016年にはどのようなトレンドが生まれそうでしょうか。

:外食産業では、夜時間帯の単価の上昇が気になっています。昨年末は忘年会が好調でした。それも単価の高い店から予約が埋まっていっていた。マクドナルドやチェーン系の居酒屋などは依然厳しい状況ですが、個店や高級店には復活の兆しがあります。景況感が良くなっているというよりも、消費者がよりメリハリ消費をするようになったためだと思います。「家でできないことは外でやる」。そう思っているのでしょうね。

 一方、中食や内食では、先ほど説明した通り、軽食化が進むと思っています。ご飯と味噌汁、おかずといった食のスタイルではなく、軽く、多頻度に摂取するようになる。

 残念なのは、コンビニがいまだに丼やうどん、パスタという、がっつり系のメニューをメーンに据えていることです。セブンイレブンでは金のシリーズなど、パッキングされた焼き魚やハンバーグも展開しています。けれども、あれでは鮮度感がない。もっと軽量化し、鮮度感を高めた、「ちょっとした総菜」。そんな商品が弁当コーナーに並ぶようになれば、コンビニはもっと売り上げを伸ばすことができるでしょう。

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