そして何よりも自分の不安を払拭してくれたのは、孫正義社長ご自身の英語でした。ユーチューブで孫社長が英語を話している動画を探して、聞いていただくとわかりますが、難しい単語は使わず、話すスピードもゆっくりです。孫社長が使っている英単語を分析したこともあるのですが、大半が中学や高校で習う単語で、そのほかは例えばIT系などの専門用語が入るくらいです。
それでも、世界中の大物と一歩も引くことなく、英語で話し合いをし、米アップルの社長だったスティーブ・ジョブズ氏に代表されるような超大物たちを説得してきたのです。英語を学ぼうという人は最初に一度、孫さんの英語を聞いた方がいいと思います。
(ここで孫正義さんが英語を話している動画をスマホで見る)
投資した時間と労力の効果を最大化する
なるほど、日本人にも聞き取りやすい英語ですね。
三木:それはつまり、かなり日本語なまりの英語だということです(笑)。私は孫さんの英語を聞きながら、「流暢に話す必要はないのだ」「限られた表現を覚えればいいのだ」ということを理解しました。読者の方々も、孫社長の英語をロールモデルにすれば、「自分にもできるかも」「なんとかなりそうだ」と思えるのではないかと思います。
とはいえ、私の場合、英語に割ける時間も労力も限られていましたから、その中でいかに効率的に英語を学ぶかを考えると、自然な流れで、“ソフトバンク流仕事術”を英語学習に適用したような勉強法になりました。というのは、つまり──自分の「ゴール」を再認識して、そのゴールに到達するために効果が最大限に上がる勉強を最優先にするということです。優先順位を大胆につけるわけです。
「ROI英語勉強法」と言ってもいいかもしれません。ROI(Return On Investment)とは、投資した資本に対して得られる利益の割合のことですよね。自分に必要な英語はどんな英語かを突き詰め、そして、自分の目標を達成するために成果の上がる勉強に集中する。そうではない勉強は省略するということです。
ゴールを設定し、何を捨てるかを決める
「ゴール」とはなんでしょう。
三木:その当時の自分としては、「交渉で負けない英語力を1年で絶対身につける」ということがゴールでした。その頃の私の仕事は、孫社長が交渉相手の方と大枠の条件を決めた後、その枠の中の細部を詰めていくことだったからです。
具体的にどういう勉強を捨てて、どういう勉強に集中したのでしょう。
三木:例えば、英語のリーディングやライティング、発音の矯正、単語学習(暗記)などはとりあえずやらないと決めました。もし必要になれば、その都度、対策を取ればいいと割り切ったのです。
そして、スピーキングとヒアリングを集中的に鍛えることに決めました。交渉力で負けない英語を身につけるには、スピーキングとヒアリングが何よりも欠かせないからです。
一方、自分を含めて日本人の多くはリーディングはある程度できますし、面と向かって対応する必要のないライティングは、スピーキングやヒアリングに比べて、“手抜き”ができるだろうという計算がありました。“手抜き”とは例えば、あらかじめ用意しておいた英文メールのひな形集を使い回すといったことですね。
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