防げなかった自殺も

…自殺をほのめかしたり、失踪したりするケースも多いのですか。

田中:残念ながら2016年、私たちが相談を受けていた仲間で、3人の自殺者が出ました。大体毎年、3人ぐらいでてしまうんです。

 福島県で起きたケースでは、あるギャンブル依存の男性が2回ほど自殺未遂を起こし、その時は一命はとりとめたんです。でも、2度目の自殺未遂のあと、精神科への入院を強く要望したのに、救急病院でそれが受け入れられず家に返されてしまって、その1週間後に自殺してしまいました。助けられたのにと思うと非常に悔しい思いです。医療・救急との連携体制の強化も含め、まだまだ啓発が必要で、社会が依存症について知っておかないと同じことが繰り返されてしまいます。

確かに、ギャンブル依存症がどういう状態で、最悪の場合は自殺にまで至るということまでは知られていません。

田中:最終的には鬱になることが多いんですね。まず直面するのはお金の問題ですが、それが家庭に広がり、さらに会社での横領など仕事にも影響します。そうしていろいろな要素が絡み合うことで、一体何が根本的な原因なのかが見えにくくなり、解決がどんどん難しくなっていく。

 本来であれば、重篤な場合はすぐにギャンブル依存症の回復施設に入れて回復プログラムを受けてもらう必要があるのですが、家族も周りもそんな知識がないので、誰も的確に判断できないわけです。周りにもアドバイスができる人がいませんし。

田中さんもかつては当事者の一人だったわけですが、どのような状況になるのでしょうか。

田中:一言でいえば強迫観念です。やりたくてしょうがない。そしてギャンブルをやりだすと今度は、止まらなくなる。うまく表現するのが難しいのですが、よく例えに使うのは「水疱瘡」ですね。子供が水疱瘡になると、親は「かきむしってはだめ」と注意しますよね。でも、かきたくてしょうがなくて、我慢できない。ちょっとかくとホッとしますが、一度かきだすとかきむしってしまって傷になったりする。あの感じがすごく強くなったのが依存症です。

 私の場合は競艇でしたが、ギャンブルも水疱瘡と同じで、やり始めるとホッとして、イライラが消えるんです

勝つことではなく、ギャンブルという行為そのものが目的になると。

田中:そうですね。アレルギーと同じで、人によって状況が違うんですね。自分の場合、お酒もタバコもスパッとやめられたんですが、ギャンブルだけは自分一人ではやめられませんでした。あと買い物。この2つは行動依存なので似ているのかもしれません。ギャンブルはやめられても、買い物にシフトするケースもよく聞きます。ゲーム依存になることもあります。ただギャンブルをやめさせるだけでなく、ほかの依存症に向かわないようにも気をつけなくてはならないんですね。

 これまでギャンブル依存症の対策が進んでこなかったのは、私たちのような当事者があまり声を大きくして主張してこなかったことも原因の一つという反省もあります。これからはもっとアピールしていきたいと思っています。

(インタビューが終わるやいなや、失踪した支援者を確保した現場に向けて飛び出した田中代表。その後、無事に回復施設につなげることができたとのこと)