まずは予算を増やすこと

ギャンブル依存症に苦しむ人を生まない、または既に苦しんでいる人を救うために、具体的にはどのような対策・支援策が必要だと考えますか。

田中:やらなくてはならないことは多岐にわたるのですが、まずはある程度の予算を確保しなくては何も始まりません。国の予算だけではなく、既存のギャンブル運営母体が売上高の数パーセントを拠出することも必要になると思います。

 現状、ギャンブル依存症対策の予算は、厚生労働省を中心に1億円程度です。韓国での予算は22億円と日本を大きく上回りますが、それでもカジノを自国民にも開放したことも影響して、対策は必ずしもうまくいっているとは言えません。ですから単純に人口比で考えても、日本の場合は最低でも50億円は必要ではないでしょうか。

その上でどのようなことから始めるべきだと考えていますか。

田中:例えば支援現場の課題として、圧倒的に人材が不足していることがあります。ギャンブル依存症については、こちらがベストと思うアドバイスをしても、結果として自殺してしまうなどのリスクもとても高いんですね。そうなると援助職も自責の念で苦しむことも多いですし、ショックも受ける。それだけ覚悟が必要です。

 単に基礎知識や資格があればいいというわけでなくて、いろいろな事例を見てきた経験や勘のようなケースごとの判断力もとても大事なんです。最近では自治体に非常勤のスタッフを置く動きも出てきていますが、お金と時間をかけて、人材を育てていくことがまず必要です。

 ほかにも医療機関との連携などやらなければならないことは多岐にわたるので、横断的にギャンブル依存症対策を管轄する組織を作り、民間も巻き込んでいくべきだと考えています。いずれにしても、カジノが出来てから考えるのではなく、既に数多くのギャンブルが存在する今から始めなくてはいけないのです。

既存の公営ギャンブルやパチンコ産業などには、どのような対策をしてもらいたいですか。

田中:先程も申し上げたように、まずは依存症についての対策や啓発活動にもっと予算を割いてほしいんですね。例えば、年末の有馬記念でも、いろいろなところに大きな広告が出ていましたよね。それら広告のうち3本に1本でも5本に1本でもいいので、依存症について正しい知識や相談窓口などを知らしめる広告を入れなくてはいけないなどの規制を作り、依存症啓発バージョンのCMを流すなどです。

 あとは、本人や家族の自己申告に基づいてギャンブル場にアクセスできないようにする制度は海外でも効果の高い対策として定着しており、是非日本でも導入してほしいですね。

パチンコ店などではIDチェックもなく、誰でも自由に出入りできるので、難しそうですが…

田中:例えばタバコでは成人を識別するための「タスポ」カードが導入されました。少なくとも、まずああいった制度や設備を導入して、青少年を排除するなどの年齢制限には厳格に取り組むべきです。その分、新たな投資も必要になりますが、それもまた経済の循環を生むことになるのでは?と思います。

 入場制限についても、いろいろな技術を使えば決して不可能ではないはずです。業界としてやる気があるかどうか、または国としてやらせる気があるかどうかの問題です。