日経ビジネス2016年12月5日号特集「おのれ間接部門」は様々な反響を呼んだ。中でも、間接部門に勤める読者から上がったのが「直接部門は、間接部門は暇だと思っているようだが、それは大変な誤解」という声だ。「間接部門の人員不足は既に限界を越えている」と指摘するアビームコンサルティングの安部慶喜・執行役員経営改革セクター長に、経理や総務部門の窮状について聞いた。

(鈴木 信行、西 雄大)

大学院卒業後、アビームコンサルティングに入社。製造業、卸売業、サービス業、運輸業、銀行、保険、エネルギー業界等、各種業界向けに、経営戦略立案、制度・業務改革、組織改革、ERP導入、法制度対応、成功報酬型コストリダクション、新規事業支援等、幅広い領域でコンサルティング業務に従事。現在は経営改革セクターの組織長として、同領域をグローバルで牽引している。執行役員プリンシパル(写真撮影北山宏一)
大学院卒業後、アビームコンサルティングに入社。製造業、卸売業、サービス業、運輸業、銀行、保険、エネルギー業界等、各種業界向けに、経営戦略立案、制度・業務改革、組織改革、ERP導入、法制度対応、成功報酬型コストリダクション、新規事業支援等、幅広い領域でコンサルティング業務に従事。現在は経営改革セクターの組織長として、同領域をグローバルで牽引している。執行役員プリンシパル(写真撮影北山宏一)

――2016年12月5日号の日経ビジネス特集「おのれ!間接部門」では、間接部門と直接部門の不協和音が会社の成長を阻害しかねない現状を報告しました。なぜ両者は分かり合えないのでしょう。

安部:全社的視点で互いを思いやる姿勢が足りないのだと思います。そもそも間接と直接部門は視点と役割が違います。攻めて売り上げを増やすのが直接部門の役目なのに対し、リスクをいかに下げるのかを考えるのが間接部門の任務です。いわば真逆の作業をしているわけで、意見がぶつかるのは仕方がないことなんです。強い会社になるためには、そうした会社の構造を考えた上で、互いの妥協点を見出し、理解を深め合わないといけないのですが、それができていない。ただし、昭和の時代はそれでも大きな問題は起きなかったんです。

昭和の“のんびり総務”などもうない

――なぜ、昔は直接部門と間接部門が多少対立していても問題なかったのですか。

安部:売り上げが右肩上がりで、成長し続けていたからです。営業部門はリスクなどとらなくてもどんどんモノを売ることができたし、新規の営業先も次々に開拓できた。間接部門も、コンプライアンスや内部統制などを今ほど問われることがなかった。営業はどんどん儲け、間接部門はそれをサポートする。それですべてうまく回ったんです。ところがバブルが崩壊すると状況が大きく変わりました。間接部門の人員が一気に極端に減らされるようになったんです。シェアードサービス導入やBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)といった外部委託が進み、組織はどんどん小さくなっている。一方で、連結経営となり内部統制も加わるなど責任と役割は増すばかりです。

――直接部門の中には「間接部門の仕事は暇で、自分たちの存在感を維持するために無理やり仕事を増やしている」というイメージを持っている人もいます。

安部:間接部門が暇など全くの間違いです。確かに昭和の時代には、そういう側面もあったかもしれません。企業を舞台にした昭和の映画やドラマの中には「間接部門=暇を持て余している気の良いおじさんの集まり」という描かれ方も多かったように思います。直接部門に間接部門の仕事は楽だと勘違いしている人がいるのだとすれば、そんな昭和の映画のイメージを引きずっているのではないでしょうか。

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