和田:そうなんです。それが「テロ」という行為の怖いところなんです。

 イメージとして分かりやすく言えば、「テロは、個人が一般的な犯罪を侵すのと同じくらい簡単」と言っても過言ではない。それが昨今の欧米におけるテロ未遂事件の連鎖でもあります。一般的な犯罪とテロが違う所の1つとして、その後の結果です。起こす難易度は“犯罪と同レベル”のことでも、その後の社会的な影響は違い、国家間の緊張を高め、果ては戦争に繋がる恐れだってある。事実、9.11同時多発テロは、その後の対テロ戦争に繋がりました。

個人の暴走が戦争を招きかねないという意味では、大津事件(※)みたいなものがものすごく起こりやすくなった、みたいなことでしょうかね。

(※注:大津事件 1891年、当時の強国だったロシアの皇太子が来日した際に、警備に当たっていた日本人の巡査が特段の思想的背景のないまま彼に斬りかかり、怪我を負わせた。日本は関係悪化を恐れ天皇がロシア皇太子の見舞いに赴くなど、国を挙げた騒動となった)

和田:要するにその犯罪行為が政治性を帯びるかどうか、ですよね。起こすのは簡単、でもそこから見える政治的なメッセージ、社会的な影響という意味では1つの国家の武力行使と同じくらいの意味を持つ場合だってある。だからテロという行為は非常に怖いわけなんですね。

疑心暗鬼こそテロ組織の思うツボ

しかもネットのおかげで、政治的なメッセージを込めた発信ができるようになってしまった。

和田:そうなんです。基本的に“普通の”犯罪というものは、当たり前なんだけど、犯人は自ら犯行声明を出しませんよね。普通の犯人は、見つかったら怖いから手がかりを残したくないわけですよ。だけれども、テロリストというのは自分たちで犯行声明を出すわけです。そこがテロリストと普通の犯罪者との大きな違いなんです。アルカイダもISもいつも声明を出しますよね。

しかもそのアピールの仕方が今の時代を反映して、ISはめちゃくちゃうまいと。

和田:うまいんです。非常にテクニカルに、ハリウッド映画さながらのような画像を出してくる。言い方はよくないですけど、洗練されている。だから、国籍や人種に関係なく、現状に不満を持つ人を惹きつける。ISは現代の科学技術とグローバル化が生み出した、グローバル化リスクの産物とでも言えるようなもの。だからこそ、大国であっても対応が難しいんだと思うんです。今のISは、見える要素と見えにくい要素を兼ね備えるハイブリッドな安全保障上の脅威と言えます。

人間の、安易なテロ的行為を誘発するものがIS、という言い方もできそうですね。そうなると、実際のテロ対策はもちろんですが、ISの宣伝を丸呑みせずに「これは本当に宗教や差別に本当に関連したテロ行為なのか?」と、疑う姿勢を持つことも必要かもしれません。

和田:IS側にすれば、彼らの宣伝に乗せられて、日本で騒ぎを起こす人が現れれば大歓迎ですね。それが、人種や宗教の問題と勝手に結びついて、「あいつらはISのシンパじゃないか」などと、日本社会が疑心暗鬼に陥ればまさに思うつぼです。

 テロの実行阻止のために最高度の警戒を行う一方で、短絡的な感情の激発を避けるためにも、彼らのバックグラウンドを冷静に分析し、ISを多角的な観点から見ることが必要です。

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