和田:それと同じことですね。環境問題も「トランスナショナル」、脱国家の問題です。同様に、全てではありませんが、21世紀のテロも脱国家の問題になっています。日本国内で例えばISの事件が起きたとなれば、中東とかアフリカ、アジア、そして欧米各地にいる、ISにシンパシーを覚える人、彼らの考え方に染まる人が増え、テロ事件が拡散していくことも否定できない。

 厳しい現実ですが、「サラフィー・ジハーディズム(※)」に染まる可能性を持つ人は世界各国に存在します。もちろんそれに染まる以前のバックグラウンドや、どの程度深く染まっているかなどは個人により異なりますが、同じような目標を持った個人やグループが日本でテロを成功させた。じゃあ、俺たちもやろうという感じでリスクが増すわけです。

(※注:サラフィー・ジハーディズム イスラム初期時代への回帰をジハード=聖戦によって訴える思想)

なるほど、そう考えるんですね。

和田:そうなんです。だからこの問題は、フランスが、米国が、日本が、アフリカが、中東がではなく、トランスナショナルな観点から分析していかなければ、うまく理解することはできないんです。

 アメリカなどの有志連合がISへ空爆を開始して以降、ISの敵意も非常に欧米に対して強くなり、それ以降、アメリカやフランスもそうですけど、他にもオーストラリアやカナダとか、こういったイスラム教徒の存在感が小さいと見られてきた国々でもISの影響を受けたホームグロウンテロ(※)が多く発生しているんです。例えば代表的なものとして、2014年10月のカナダでの議会銃乱射事件、2014年12月のシドニーでの、カフェで人質をとって立てこもった事件などが挙げられます。もちろんほとんどが未遂で終わったんですけれども。

(※注:ホームグロウンテロ 国内で生まれ育った物が、国外の過激派組織に共鳴し、自国内で起こすテロ行為)

 特にオーストラリアは、IS以前のアルカイダの時は、テロ事件はほぼなかったのですが、2014年6月のIS誕生(=カリフ制によるイスラム国家の樹立宣言)以降、シドニーやメルボルンなどでテロ未遂事件が多く発生しています。オーストラリアはアメリカの同盟国であり、空爆にも参加している。そして住んでいる人は基本的に白人、欧米人ですよね。だからそういった意味でオーストラリアは標的にされる理由が揃っている。

日本でホームグロウンテロは起きるのか

でも、オーストラリアにISの影響を受けてテロを起こすような人がそんなにいるんでしょうか。

和田:今シリア・イラクのISに入っている中にも、オーストラリア人が100人ぐらいいるとされています。

それは国籍オーストラリア人で、もともとはレバノンとかからの移民、中東系の方なのでは。

和田:確かにそういう人々が多いのは事実ですが、昨今のこの問題で難しいのは“普通の白人”でも渡航直前にイスラム教へコンバートし、ISに流れている者が多くいることです。最新の情勢報告によれば、多国籍集団ISには2万7000人から3万1000人あまりの構成員が、世界86カ国から参加しているとされています。

すみません、ここがどうもよく分からないのですが、それでも日本って、何というか、例えば欧米諸国が非常に恐れているのは、国内にいるISのシンパが起こすテロ、ホームグロウンテロですよね。

和田:そうですね。

でも、その背景にはイスラム教徒の移民が、すでに数多く国内にいることが大きい、と思っていました。しかしお話をお聞きしていると、日本においてもホームグロウンテロが起こる可能性がある、ということになるんでしょうか。

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