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:人間の浪費というものは一回始まるとなかなか止まらないものなんですね。普段、2000円の寿司を食べている人が、宝くじが当たって「自分へのご褒美」などといって1万円の寿司を食べたとしましょう。ところが美味しい物を食べた時に出る脳内麻薬は、寿司の金額が5倍になっても比例して5倍になることはありません。「あれ、おかしいな。じゃ3万円はどうだろう」とすぐエスカレートしてしまいます。クルマ、旅行、宝飾品…。浪費はどんどん膨れ上がり、周囲からすぐに「何かあったな」と勘繰られるようになるはずです。

「そんなことには絶対にならない。自分は鉄の意思で自制心を失わない」と思っている読者もたくさんいると思いますが。

「自分は大丈夫」と思っている人ほど危ない

:そう思っている人ほど、危ない。企業側も「急に資産を築いた人」の財布を開くためのマーケティングは研究し尽くしています。ただでさえ人は、「日頃、不慣れな金額の取引」は、金銭感覚が麻痺して失敗しやすいものなんです。普段800円のランチを食べている人が、別の店に行ってランチが1150円だったらどうします。

慎重にメニューを吟味します。

:でも5000万円で家を買う時、70万円でより生活が快適になるオプションが付きますよと言われたら。

「そりゃもう5000万円払うんですから、70万円なんて大した金額ではない」などと思う人もいるでしょうね。

:そうですよね。でも、貯金という側面で考えると、その意思決定はランチの2000倍、吟味するべき対象なんです。それくらい、不慣れな取引では、いい加減な意思決定をしてしまいがちなんです。

 超高級宝飾店で買い物をすれば、豪華なパンフレットやインビテーションが届くようになります。行けばVIPルームに通される。この“あなただけ感”、“エクスクルーシブ感”に堪えられる人は多くはないですし、更にはそのような生活を諦めることはより難しくなります。「急な富裕化」というのはそのくらい危険なことで、例えばNBAを引退した人の60%は5年以内に破産しているというデータもあります。