日高:どう進めていきますか。
井戸:子会社は現在、約600人ほどの体制ですが、2020年には1000人に手が届く規模にしたい。システムだけではなく、業務のこともわかる人材を増やす必要もあります。
ITの世界やIT業界は今、本当に転換点ではないかと思っています。IT業界がどんなに変わっても、自分たちのシステムは自分たちで見定められる、そういうエンジニアを社内に作っておきたい。このことを痛感しています。
日高:人数もかなり補強されましたよね。
井戸:毎年、50人ずつ新規と中途で採用していますけれど、同業他社と比べると2分の1とか、3分の1ぐらいの人数でまだまだ追いつきません。人材を定期採用し、育てる、このやり方で本当にいいのか、という議論もあります。違う方法を考えていく必要があるかもしれません。なにしろ一人前のシステム技術者を1人育てるのに10年かかりますから。
日高:ただ、一切合切、内製化するわけではないでしょうし、よいパートナーに出すべきところは今後も出せばいいのでは。
井戸:仰るとおりで、どういうバランスでやるかということを考えればいいわけです。ベースのところは、かんぽ生命がしっかりやることが必要だと思いますが、何か突発的な開発があったら、パートナーの力をお借りすると。

日高:御社のようなユーザー企業と、いわゆるITベンダーと、関係や役割が変わっていくと見ています。ITベンダーはユーザー企業が単独ではできない、クラウドの整備や、パッケージソフトウエアの提供や、非常に専門的なサービスを提供していく。
井戸:まさにパートナーとして付き合う時代が来たと考えています。我々が持っていないスキルやノウハウ、製品やサービスを提供してくれる相手としてお付き合いし、お願いする。先ほど少しお話しましたが、どこの会社がどういう強みを持っているかということを見定める力が我々に必要ですし、相手の強みを機動的に使いこなせるプロジェクトマネジメントの力も欠かせません。
こちらの要求通りに提案しないで欲しい
日高:今後そういう関係になっていくとして、パートナーには何を期待されますか。
井戸:こちらの要求通りに提案しないで欲しいということでしょうね。
日高:面白い期待ですね。
井戸:私はそう思います。今までは、こちらの思うように提案をすることを求めていた。しかし、パートナー会社の方々が見ている世界は、我々よりはるかに広いはずです。人脈だって比べものにならないほど彼らの方が持っている。「そうは仰いますが、こういうことをしてはどうですか」という提案を期待しています。
日高:ITベンダーの力が落ちているという指摘もありますが。
井戸:私が昔、現場で仕事をしていたときに比べると、今は縦割りが強くなっている気がします。個別の製品や技術について、それぞれの専門家はいるけれども、どう言えばいいのか、全体が分かる人が減っているような。
おそらく昔は業務にしてもシステムにしても、それほど大きな範囲ではなかったので、一人で全体を見ることができました。その上で色々なプロジェクトを経験した人がいました。そういう人が徐々に引退され、業界からいなくなっているのでしょう。
とはいえ私としては、そういうことではなくて、パートナーに依存していること自体が問題だと思っています。一般論ですけれども、ユーザー企業はどうしてもパートナーに任せっきりにしてしまう。そういうことが多かった。そのくせ何かあるとパートナーの責任にするわけです。
それは違うでしょう、と。パートナー会社の責任にする前に、ちょっと待て、と言って考える。外の力をうまく使えるかどうかは、自分たち次第だよね、ということになる。とにかく社内にしっかりした人たちを育てることが急務です。そうしていけば、その先に何か花開くことがあるはずです。
日高:ところで「パートナー」という言い方は意識的ですか。
井戸:これは社長の発案というか指示ですね。パートナー会社と呼ぶようにしようと。ベンダーとか業者とか、一切呼ばせないと。言葉を変えることは第一歩ですけれども、接し方も変わってくると思います。
-「後編」に続く-
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