日高:Watsonのような新技術の使い方を会得できたのは素晴らしいですね。他の業務に使う場合でも、やり方や原理原則は基本的には同じでしょうから。

井戸:同じですね。支払い以上に難しい業務はないと思いますから、そこで成功すれば他の業務でも必ず成功すると見ています。私は情報システム部門の責任者ですから、情報システム自体の問題をWatsonに解いてもらえないかと考えています。冗長になっているシステムや仕組みはないのか。ここでこういう処理プログラムを動かしているけれど、その必要はないのでは、とか、Watsonに指摘してもらえないかと。

日高:Watsonというテクノロジーの話を聞かれてすぐ、支払いに使うと言い出した石井社長にしても、情報システムそれ自身に適用しようという井戸さんにしても、リーダー本人がテクノロジーの価値を理解して、旗を振っているところが素晴らしいですね。

 この手の取り組みは上が本気にならないと組織として動きません。お二人ともリーダーとして問題意識がずっとあったからこそ、テクノロジーについて聞いた瞬間、問題に結び付けることができたのでしょう。

井戸:やはり社長の発想が大きかったですね。支払いからやりたいと伝えたらIBMさんも驚いておられたし。これも社長の発想なのですが、今回我々が経験したことを、IBMの同意がいただければ、できる限りオープンにして、生命保険業界のデファクトスタンダードみたいな感じで皆さんに使ってもらってもいいのではないかと。

日高:いち早く支払いを高度化させて、競争力を高めようというわけではないのですか。

井戸:競争力は競争力で必要ですが、それは商品構成とか、提案のやり方とか、もっと大きな全体のサービスとか、業務全体の品質とか、そういうことも含めての話です。それはそれとして、支払い業務ということだけみたら、色々ご苦労されているところがあるでしょうし、我々の取り組みを参考にしてもらえれば、これから高齢化社会へ進んでいく中で、保険業界での支払い業務というものが、もう一段上に行くというか、違うシステムへと発展していくことができるのではないかと。

ビッグデータを解析し、本当に求められる商品を作る

日高 信彦 氏
ガートナー ジャパン 代表取締役社長
1976年東京外語大外国語部卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。1996年アプリケーション・システム開発部長。2001年アジア・パシフィックCRM/BIソリューション統括。2003年4月から現職。

日高:高齢化社会という言葉が出ました。日本郵政グループは高齢者を支援する取り組みを始めています。これに関して、かんぽ生命の構想を伺いたいのですが。

井戸:高齢者を支援する取り組みは、まさに日本郵政グループとして掲げているビジョンです。その一環として日本郵便が、みまもりサービスを始めています。地方の郵便局社員がお年寄りの方にお話をして、ご不自由がないようなサービスを提供する。これはリアルの世界です。

 そこにデジタルサービスも組み合わせていけば、もっと領域を広げて、より多くの高齢者の方々によりよい生活を送ってもらえる仕組みが作れるのではないか。こちらについてもIBM、それから米アップル、そして日本郵政グループが2015年4月、実証実験について業務提携しています。

 日本郵政グループにはなんといっても、社会インフラと言える2万4000局の郵便局があります。ユニバーサルサービスの一環として、幅広いサービス提供をしてきており、みまもりサービスはその一つです。

 我々、かんぽ生命としては健康増進サービスの支援をやっていきたい。健康寿命をいかにして延ばしていくか。お客さまの数を考えますと、ご支持いただければ、本当に社会インフラになれる大きな事業になるのではないかと考えています。もともと、当社のお客さま(契約者)の層を見ると、70歳以上の方が2割5分ぐらい、いらっしゃいますので。